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存在のない子供たちのmのレビュー・感想・評価

存在のない子供たち(2018年製作の映画)
4.8
本当に観てよかった。観なきゃいけない作品だった。
ゼインやゼインの周りの人達が置かれている状況があまりに悲惨で見ているのが辛かった。ところどころクスッと笑えるあたたかいシーンもあるのがせめてもの救い。
何より、ゼインが実年齢に比べてはるかに精神的に成熟してしまっているのが辛かった。小さくて細いその体で、妹や赤ちゃんを必死に守ろうとしていた。
妹の初潮を隠すために自分のシャツを迷いなく差し出したり、苦労してたどり着いた物資支援所で、まず最初に赤ちゃんのための「ミルクとおむつが欲しい」と言えたりと、自然に自分よりも弱いものを優先することができてしまう。えらい、えらすぎるよ、そこらの大人よりずっと大人だよ…。こんな小さな子どもが、大人のように振舞わざるを得なくなってしまった背景を考えると胸が締め付けられる。
でも、まだ12歳(たぶん)の少年には、身に降りかかる災難をすべて受け止めきれるほどの力はない。そんなの当たり前だ。限界に達してどうすることもできず、1人で全てを背負い込み涙を流すことしかできない。ゼインの目からはいつも涙が溢れていた。
それでもこんな経験をしたことのない私には、この映画の登場人物たちを責める権利はないと感じた。

遠い世界の事のように感じるけれど、実際日本にも貧困や家庭の問題で、1人で耐え抜きながら生きている子どもたちもたくさんいることを忘れてはいけないと思った。
こんな思いを子どもたちにさせてはいけないし、安心して暮らせる環境を作るのは大人の役割というか義務であると改めて思う。
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