このレビューはネタバレを含みます
こんな一節がある。
「書物の宗教が我々の社会を築き、その文章は神聖化された。…必要だったのは映像(イメージ)の書」
宗教にとっての聖書のような存在が、映画にも必要だ。そう言っているように聞こえる。
さてこの作品を観ていると、
「映画ってなんだろう」
と、原点に立ち返りたくなる。
ゴダールは70年代に「音と映像の対等な融合」を意味する造語「ソニマージュ」という名の映画製作会社を設立したが、
「映画とは何か」を考えた時、「音と映像が融合しているもの」と定義するのが最もシンプルかもしれない。しかしほとんどの映画において、その関係性は対等ではない。
この映画が難物なのは、その融合のひたむきな対等さゆえだと思う。
つなぎ合わされた引用、音楽、声の数々に全くの序列がなく、あたかも関係がないかのように展開される。
だから、全くと言っていいほど理解ができない。いやむしろ、「映画とは何をもって理解していると言えるのか」すら、分からなくなってくる。
ただ、時折放り込まれる途方もない美しさと美しさの組み合わせを感じると、「ああ映画だなぁ」としみじみ思わせてくれる。
物語に慣れすぎていると、お話を理解して映画を理解したような気持ちになるが、映画とは本来そういうものではないのかもしれない。
もしかしてこの「イメージの本」が、映画の聖典なのだろうか。