評判がよいということだけ知った状態で前情報なく鑑賞、途中までは馬鹿さ加減に辟易していた。
が、段々と人物の心理変化が描写されるに従ってリアリティや精緻さと感情の機微などがおり混ざり、おもしろくなっていった。
コメディにしては笑えないし、クライムムービーにしては雑。でもそれが「現実」で起きたことだし、登場人物は「生きた人間」だから罪悪感も認識の齟齬も生じるんだなぁと考えさせられた。
ドキュメンタリーとフィクションの合わせ技という表現方法そのものが凄い!というよりも、その二つのバランス感覚と、全員の「証言」を基にしていることがよく分かることが絶妙なんだと思う。
最後らへんで家から出たスペンサーを、走り去る車の中から無言で映しているのはどういう意味なのだろうか。社会の中では個人のことはかろうじて顔を認識できる、誰もが「普通」だけど「特別」であるということだろうか。