うみぼうず

遺灰は語るのうみぼうずのレビュー・感想・評価

遺灰は語る(2022年製作の映画)
3.0
死をどう捉えるかの物語だったのかなぁ。ノーベル文学賞受賞者という栄誉ある肩書きを持っていても老いと死はいつの間にか訪れてくる。
ある人にとっては権威ある遺灰(=死)であっても、他の人にとっては飛行機が落ちるかもしれない縁起が悪いものであり、ある人にとってはカードゲームを行う台程度の価値しか感じない。でも人の死ってそんなもんだと思う。誰かにとっては大事な人でも、他人にとっては壺や棺(生前の価値でなく今見える現在の物質)しか見られずに笑われることもあるだろう。大層な墓でなくシチリアの海に自由に舞うことは難しいが、結果叶って良かった。

と観ていると、後半の『釘』は人の死は定めであることの不条理さを出しつつも、不可避のものであると示唆しているのかな。更に少女のボロボロの靴などから苦しみからの救済や、美しいまま老いずに苦しみを知らずに死なせてあげた、ということなのだろうか。

前半は当時の映像も相まってNHKスペシャルとかプロジェクトXのような感じ。でも当時のイタリアの混乱や人間性、文化的な考え方も見られて、面白いというよりも「へぇ〜、そうだったんだ」という印象が残る。この時代から火葬場って基本的なシステムは同じなんだね。
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