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記者たち~衝撃と畏怖の真実~のMaUのレビュー・感想・評価

3.7
以前見ている「バイス」と併せて見ておくべき作品としてチョイス。9.11以降、アメリカ政府はなにを画策し、イラクに対してどのように軍事作戦を行ったのか… 市民の代表として真実を伝えるべきジャーナリズムは死んでしまったのか…

真実に基づいているので淡々とした展開ではあるが、イラクの作戦に赴き、脊髄損傷を負った一アメリカ兵の行動と照らし合わせながら進んでいく感じはさすが。9.11以降、大手新聞社が政府の広報になりさがり、政府の描いたシナリオ通りに行動の正当化が運んでいく中、ナイト・リッジ社はフリーの記事配信メディアとして、ジャーナリズムの信念を失わず真実を追求していく。

彼らが成し遂げたのは、アメリカの真のジャーナリズムを失わず次の世代に伝えていくことのみだったかもしれない。でも、本人および家族や周辺の人間たちが、彼らの信念を誇りに思い貫いていけること、支えていけることには心が動かされる。「真実を疑え」とは邦画「新聞記者」の中でも問われていたが、本作品の中でも、方向性に迷いを見せる部下の記者たちにボスは毅然と言う。「When the government says something, you have the only question to ask, "Is it true ?" 」。戦争がビジネスだととらえているアメリカは常にどこかに火種を求めている。そうした国と果たして私たちは客観的な距離感を保ち、報道に常に反証を投げかけられるだろうか。こういう作品にはいつもそれを思う。数を使ってこの戦いにまつわるものを表現していく脚本がいい。ラストクレジットの0(ゼロ)には怒りさえこみあげるけど。

記者役のウッディ・ハレルソンが個人的に人間らしくて好き。適度にかっこよく、適度にかっこ悪い感じがちょうどいい。そして、ボスのロブ・ライナーがいい。彼の監督作品は硬派なものでもそこにちゃんと人が描かれてるのが好き。

「バイス」「スポットライト」「ペンタゴンペーパーズ」「新聞記者」あたりと併せ、昨今の私の中では追いかけておきたいテーマの作品だった。
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