踊る猫

真実の踊る猫のレビュー・感想・評価

真実(2019年製作の映画)
4.0
この世にあるのは事実である。それを私たちは「真実」として認識する。だが、私たちはしばしば事実を偽る。意図的に嘘をつくこともあるし、記憶違いや錯覚をしてしまうこともある。だとすれば、なにかが「真実」であると認定されるとすれば、それは(それがたとえ事実と食い違っていたとしても)「真実」を保証する誰か/他者が存在するからに他ならない。この映画で開陳される事実は、大物女優の自伝の記憶違いや偽りでありあるいは彼女が語る台詞である(俳優は言うまでもなく、「演技」を行い虚構を「真実」らしく見せる存在である)。だが、それらを私たちが(この映画に即して言えば大物女優の娘や孫が)「真実」として受け容れるならそれらは「真実」である。タイトルの愚直さ/ストレートさが頼もしいこの映画では、そうした「真実」を「共に信じる」人々の共同性/友愛が微笑ましい形で現れていると言える。だが、そこにたどり着くまでの彼女たちのやり取りはしたたかで決して侮れない。日本だと樹木希林と小林聡美が演じたのだろうか、と思いつつ観たのだけれどそこは監督のこと、ドヌーヴとビノシュだけにしか演じられない役割を与えているのだろう。そこまでは読み取れなかった。私の修業が足りないせいだ。
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