たけちゃん

ジョージ・ハリスン/リヴィング・イン・ザ・マテリアル・ワールドのたけちゃんのレビュー・感想・評価

5.0
音(Sound)は神なのです!


マーティン・スコセッシ監督 2011年製作
主演ジョージ・ハリスン


勝手にお知らせシリーズ「今日は何の日」
本日、2月25日は元ザ・ビートルズのギタリスト、ジョージ・ハリスンの誕生日です!

僕がビートルズを好きなのは、ビートルズの映画やジョン・レノンのレビューなんかでも度々語ってきました。
そのメンバーだったジョージは「静かなビートル」と呼ばれ、地味なイメージが付き纏っていますが、ビートルズ中期にインド音楽に傾倒した頃から輝きを魅せ、ジョージにしか表現できない音楽を奏でていて、僕は大好きだったんです。


ビートルズは知っていても
あるいは、ポール・マッカートニーやジョン・レノンは知っていても
ジョージ・ハリスンを知らない人はいるでしょうね。
特にビートルズ解散後の彼は……

でも、ジョージが本当の意味で自分を表現し、自らを輝かせたのは、解散後なんです。
フィルマのみなさんなら「ガーディアンズ・オブ・ギャラクシー リミックス」で使われた「My Sweet Lord」の作者と言えば通じるかも( ˘ ˘ )ウンウン
今回のレビューは、そんなジョージ・ハリスンのことを少しでも知ってもらおうと思い、書き上げました( •̀ω•́ )و✧


【ジョージ・ハリスンのこと】
ジョージ・ハリスンは1943年2月25日、イギリスのリヴァプールで、バスの運転手をしていた労働階級の家庭に生まれました。
ジョン・レノンが結成し、ビートルズの前身バンドとして知られる「クオリーメン」にポールの紹介で、わずか15歳で加入。グループ最年少だけど、当時、既にジョンやポールよりもギターが上手かった。
大人しいイメージの強いジョージだけど、髪の毛をターバンのように回してセットしていたり、中々の反骨精神の持ち主で、そのへんが、後期のポールとの対立なんかにも繋がったのかなと感じるよね。

1960年にザ・ビートルズと改名し、リンゴ・スター加入後の1962年に「Love Me Do」でデビューしてからは、もうみなさんのご存知のストーリーです。
ビートルズ時代に残した曲は、ジョンやポールに比べると少なく20曲ほどですが、初めてシングルとなった「Something」や「While My Guitar Gently Weeps」「Here Comes The Sun」など、後世に残る名曲も書いています。
僕はインド音楽の影響下にあり、シタールなどを用いて演奏された「The Inner Light」や「Blue Jay Way」が大好きなんですよね~。


1970年にザ・ビートルズが解散し、翌1971年にソロアルバム「All Things Must Pass」というロック史に残る傑作アルバムを発表。これ、なんと、3枚組にもなる大作ですが、英米でチャート1位に輝きました!
このアルバムの中に「My Sweet Lord」も収録されています。
ビートルズとしてはこれ以上輝けない。
でも、語りたいもの、表現したいことがある。
そんな彼の思いが膨大な曲のストックになっていました。
彼の思いが爆発した傑作アルバムでした。

1987年に発表したアルバム「Cloud Nine」は「Get My Mind Set On You」のヒットもあり、健在ぶりをアピールしましたよね。


とにかく、ジョージの書く歌は優しさで溢れてます。
聴いていると、イライラした心も穏やかになる。
歌い方も優しいんだけど、その歌詞が本当に心にスっと染みてくるんです。
それは彼の素直な気持ちが載せられていたから。
飾らない言葉が胸に染み渡りました( ˘ ˘ )ウンウン


1998年には喉頭癌が発覚し、手術。
1999年には、なんと自宅に変質者が侵入し、重症を負って入院することに。このあたりは映画にも描かれていましたが、ジョージは何となく自分の人生の終わりを悟り、死を意識して生活し始めたように思います。
2001年11月29日、肺がんと脳腫瘍のため死去。
まだ、58歳でした。




さて、映画です。
実はちゃんとフルで観たのは初めてでした。
だって、この映画はマーティン・スコセッシが仕上げたドキュメンタリー作品で、なんと210分、3時間30分もあるんですよ。
その時間を取るのにやっぱり躊躇いがあってね。
まとまった時間でもないと観られない。

今回はジョージの映画をレビューしようと思っていた頃、風邪をひいて寝込んでいたタイミングで観たんです(笑)チャントネテナサイ



映画全体はパート1とパート2に分けられ、パート1はビートルズ時代から解散の時期。パート2は解散時期から晩年、という感じです。
本当にジョージの人生全てを辿る作品でした。
マーティン・スコセッシの演出は丁寧で、奇を衒ったところはありません。出会いから時系列に追っていきます。

それなのに、観終わってみると、ジョージの人と成りはもちろんのこと、その精神世界までもがグッとこちらに伝わる内容で、とても素晴らしかった。
特に、解散後の彼が辿り着いた世界が、本当に上手く描かれていた。
その時々の曲の選曲も絶妙です!


10代でビートルズとなり、メンバーを取り巻く世界が一変したと思います。10年にも満たない期間を人の一生分の密度で駆け抜けた若き集団。特に、ジョン・レノンとポール・マッカートニーという天才と共に活動するというジョージが抱えた苦労や心労は想像に難くない。それはリンゴにも言えるんだけど。
「ゲット・バック・セッション」に限らず、いつグループを辞めるかと悩み、ずっと苦しんでいたんでしょうね。
だからこそ、インド音楽とインド哲学に出会った彼は、人生の安らぎをそこに見つけたんだと思います。

「Living In The Material World」とは、そのまま物質世界に生きることですが、ジョージはその人生を通して、如何に精神的に解放されるかを考えていたので、その対極としてあったのが物質世界だったんです。
財や名誉には拘りがなく、自由でありたかった。
だから、おそらく彼の死は物質世界からの解放であり、精神世界への旅立ちだったのだと思います。


あと、驚く程にエリック・クラプトンのインタビューが多くて、ちょっとビックリしました。
もちろん、クラプトンとは親友でしたからね。
でも、ジョージの妻だったパティを真剣に愛してしまったエリック。そのパティへの思いを曲にしたのが、デレク&ドミノスの「いとしのレイラ」だというのは有名な話ですが。
なんと、こともあろうかそれをジョージ本人に打ち明け、どうしたら良いか相談したんだそうです。エリックも誠実だとは思ったけど、これはちょっと大問題。こんな話も収められていて、正直、ビックリしました。

後にジョージはパティと離婚し、パティはエリックと再婚します。
ジョージも新たな伴侶オリヴィアを得て、一人息子も授かるので、万事OKな話ではあるんですが……。
これって、神のお導きなのか?



ラストソングは「Long Long Long」
ザ・ビートルズの「ホワイト・アルバム」に収録された曲です。
「長い長い年月をかけて、君に出会った。
もう、失うことなんて出来ないんだ。」
ジョージを知る人は、彼のことを本当に愛していたようで、この曲を最後に持ってきた意味もそこにあるのかと感じましたよ。
まさに、男女の愛を超えた愛、神の愛。


58年って、決して長くはないんだけど(僕でさえもう時期そこに辿り着く)、豊かで温かな人生だったことが伝わりました。
今はきっと、安らかなんでしょうね( ˘ ˘ )ウンウン
ジョージ、誕生日おめでとう(^-^)