作品が生まれる瞬間をエルトン・ジョンの感情の流れに噛み合うピークへと配置する静かな演出は、強いられた高揚を現すミュージカルかつドラッギーな進行の中で何かを灯す様な暖かさを宿す。
それは彼の心が久方振りに何か柔らかいものに触れて解け合う様な感覚として、言い現し難い感動がある。
実話も含めた物語において観客の多数を納得させるには、起こった問題をいかに他者と絡めて解決していくのかという一種の娯楽性が求められる。
しかし「道化師」エルトン・ジョンのド派手なライブシーンが立て続けに描写されるこの物語は、次第に「自己解決」へと舵を切っていく。
それを物足りないと感じる観客にはきっと分かり得ない感慨の瞬間を、「道化師」の衣装を少しずつ脱ぎ捨てていく彼からぜひ見つけてほしい。
見つけるも何も、答えは物語のど真ん中にあるのだけど。分からない人はきっと居る。
ある意味で、最後に自分を愛せるのは自分だけ。