踊る猫

ヘイト・ユー・ギブの踊る猫のレビュー・感想・評価

ヘイト・ユー・ギブ(2018年製作の映画)
4.2
敢えてイヤミな言い方をすると、「ウェルメイド」な作品だと思った。黒人の主人公スターを多様性(!)が保証された学校に通わせ白人の友だちやボーイフレンドを設定することで、彼女が黒人としてのアイデンティティに悩みつつも拘泥しすぎない、むしろそれを茶化すことのできる(?)知性を備えていることを巧く証明している。だからこそ、白人警官による誤射で黒人の友だちを死なせるという悲劇から生まれるこの話は、黒人ではない観衆(少なくとも私がそうだ)にも受け容れられるマイルドな、口当たりのいい成長物語として受け取りうると言える。黒人文化にそれほど造詣が深くなくとも享受することができ、かつスターが得た気づきを自分自身の気づきとして活かせることができる。その意味ではよくできているのだが、逆に言えばBLMの問題は社会的に染みついた根深い問題であり彼女の志が変化したからと言って変わるものではない。このエンディングでは、単に友だちの死を契機に自分が目覚めたという彼女の自己満足で終わっているフシがないだろうか。いや、むろんそこまで彼女に求めるのは酷なのだが、なら彼女の葛藤はむしろこれから本格的に始まるという予兆を匂わせるラストであって欲しかったと思った。
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