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アルキメデスの大戦のNMのレビュー・感想・評価

アルキメデスの大戦(2019年製作の映画)
3.5
観始めると主人公の強烈キャラになんだかアニメっぽくてつまらなそうと個人的には感じていた(もちろん設定説明だから必要だし仕方ない)が、途中からどんでん返しもあり非常に面白かった。
真剣味が増し、戦争や社会の深淵へと迫る。
事実に着想を得たフィクション。
見応えあり。一度観て損はない。
タイトルのアルキメデスというのは単に数学者の代表として使用されたようす。

日露戦争が終わり、未だ勝利に酔いしれている日本。だが日本が最強ではないことは、知る人ぞ知る。
数字の虜である天才学生・櫂(カイ)が、この先起こるであろう戦争を見越した軍に取り込まれていく話。
軍にも日本にも全く興味がないカイだが、戦争が起こっては彼の目下の予定であるアメリカ留学などしてはいられなくなる。
カイは計画を、戦争を止められるのか……?


海軍で、世界最大の軍艦「ヒラヤマ」(平山造船中将による企画なので。)を作る案が持ち上がった。
それを所有しているという驕りは日本を戦争へと向かわせるだろう。
また一方でこれは陸軍との予算争奪戦でもある。だからできるだけ安い見積もりを出して絶対に予算を通したい。
そこで平山は民間の造船企業と結託し低い見積もりを出させた。

海軍内でも意見は分かれており、対するは小型の高速戦艦派。
その筆頭である山本五十六は、数学の天才と呼ばれている学生カイに目をつけた。
山本はカイに、このままでは戦争が起こる、それを止めるには予算の不正を暴かないと説得し、カイを海軍に引き入れた。

カイはその尽きない探究心と非常識な計算スピード、それに軍規に縛られない発想と作戦で、たった数人の仲間だけで正確な予算の算出にこぎつけた。
やがて会議の日。
カイは平山が本来の予算の半分で提出したこと、そして設計に不備があることを見事証明してみせた。平山中将はカイの見事な才能に感服し、自ら計画を取り下げた。
やがてその計画をみな忘れたころ……?

戦艦ヤマトがどうなったかは既に冒頭で見せられている通り。
観客である我々は、山本五十六がどういう人物かも、戦争が止まらなかったことも知っている。
この会議のあとどうして戦艦が完成し戦争が起こったのかという、計画を打ち砕いたあとの展開が本番。
青年のキラキラした目が悲しみの涙で滲むまでの物語。
数字という戦艦よりも巨大な存在に生来取り憑かれている運命に彼は抗いようもなかったのだ。
戦争を始めるにあたり必ずしも誰かが良い人で誰かが悪い人という線引きはあってないようなものだと感じた。

いざ行われた会議もとても迫力があって良かった。愛人の話で揉めだすのも急に緊張がほぐれて面白かった。
ほぼみな適役かつ演技も良く、部下役榎本が割りとすぐカイになついていく様子もかわいらしい。
最初に行われていた会議でその豪華すぎる名優陣を観て面白いほどだった。橋爪の、悪いやつだけどどこか抜けていそうな小物感のある演技は秀逸。

検索したら漫画が無料公開されているが現在も連載中で次回は342話とのこと。

メモ
昵懇の仲......じっこんのなか。めちゃ仲いいこと。
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