上映前にジョージア映画祭企画のはらだたけひで氏による解説あり。予定されていたテムル・バブルアニ『雀の渡り』という作品は監督本人があるある言ってた上映素材が実は失われていて上映不可能となったため本作と差し替えたそう。氏の苦労がしのばれる。そもそもかつてのジョージアの映画が本国でどのくらい歴史的意義をもってアーカイブされているのか、上映の機会も含めもしかしたら日本の方が一般客の需要は多いのかもしれない。
この『少女デドゥナ』も監督所有のDVDの劣化した映像からテレシネしたものだそう。「想像力で補う」というはらだ氏の言葉どおり、状態は悪くても陰影の深さが『エル・スール』『ミツバチのささやき』を彷彿とさせ、雪のシーンも密やかな美しさがあった。説明的なシーンも無く台詞も少なくとても静かな作品。少女が主人公だし、もしかしたら監督のダヴィト・ジャネリゼはビクトル・エリセを意識していたかもしれないが、ペレストロイカ以前で西側の映画が観られたのかどうか。
少女デドゥナの赤いコートとグレーのスカーフが印象的で、母を亡くし父の身の回りの世話や家事をしながら暮らすさまや近所のおばあさんの教訓が父権社会を垣間見せる。レコードプレイヤーを修理してくれた少年とポップコーン(ジョージアにもあったのか)を作り、部屋にはねたポップコーンを楽しそうに拾うところが印象的だった。
誰もいない廊下を少女が教室へ向かい、机の上に上げられた椅子を一つひとつ下ろすシーン、ヘリコプターが開けた草地から飛び立つシーンが最初と最後に反復される。お礼に鶏をつぶそうと言われ「赤い鶏なら黒い鶏の方がいい」「もう夜だから黒い鶏は見えない。明日もらいに来る」というシチュエーションも反復される。
ジョージア映画祭にて