さとり

この世界の(さらにいくつもの)片隅にのさとりのネタバレレビュー・内容・結末

5.0

このレビューはネタバレを含みます

「この世界の片隅に」というタイトルは、前作にも登場する「ありがとう、この世界の片隅に、うちを見つけてくれて」のところから取ったと思うから「この広い世界の片隅にいるすずさん」という認識だった。

今回、新作がやると聞き、タイトルを見ると「この世界の(さらにいくつもの)片隅に」…。
さらにいくつもの片隅とは?と思った。
すずさんだけに留まらず、その時暮らしていたそれぞれの人たちについて濃く描いたのかな?それでいろんな片隅の人たちという意味の「さらにいくつもの片隅」かな?
でも原作にしっかり描いてあるリンさんとの話が盛り込まれてるとあり、喜んで待ってました。

見終わって、「さらにいくつもの片隅」がわかったような。(一解釈に過ぎないが)
それは、世界の一辺という場所としての片隅ではなく、すずさんが心の隅に閉まったような体験とか出来事についての物語かなと思った。

秘密を秘密のままにしておくとき、その秘密は決して心の真ん中にしまうのではなく、心の片隅にそっと置いておく。
私だけの秘密、あるいは私と貴方だけの秘密というように、心の隅案件は生きていると意外とあったりする。
すずさんがもってる秘密というのは、幼少期に座敷わらしと会ったこと・新なの傘の思い出・ほうれん草の種を晴美さんと一緒に植えたこと・入島上陸のテツさんと話した内容・肺炎の花ちゃんと会ったこと・そして、リンさんと店前や桜の木の上で話した内容……。

タイトルの解釈として言うなれば、「この広い世界の片隅にいるすずさんの、心の隅にある秘密について」でしょうか。

それを知ったからこそ、前編で描かれていたシーンが違った感情で見れるようになったりする。
特に玉音放送を聞いたあとのすずさんの涙のシーンは私も感情が溢れ出した。
それに、すみちゃんだけでなく、お隣さんももうそんなに長くはないかもしれないと悟る。
また、最後に引き取った孤児がもしかしたら原爆の影響で将来病気になってしまうかもしれないとも予想できる。

しかし、すずさんの頭を撫でてくれる右手は、前作ではすずさんの無くした右手だと思っていたけれど、もしかしたらリンさんだったかもという考えもできる。
また、この作品(前作も今作も)のクライマックスは悲しみに打ちひしがれ、下を向いて孤児をおんぶするシーンではなく、
すずさんと周作さんと孤児が上をむき、明かり灯った呉の街を見ながら帰るという希望のシーンであるのだ。
前作から30分足しただけで、これほどまで見方が変わるとは思わなかった(今作をみる前にマンガは読んでるから話の展開はもちろんわかっているけれど。)。

前作のすずさんに会いたくなったら、是非鑑賞を勧めます。同じすずさんと違ったすずさん、両方に会えますよ。
さとり

さとり