Oto

ROMA/ローマのOtoのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.1
素晴らしかった。小津映画のよう。
IndieWireもニューヨークタイムズも「今年最高の1本」、ベネチアの金獅子も獲ったのに、Netflixのみで劇場で観られないのが残念。Netflix Theatreを作って欲しい。(火事とか病院とか波とか大画面で見たら絶対迫力あるし、エンジン音も学生運動も大音量で聴きたかった)

言ってしまえば、日常を切り取っただけの映画なんだけど、非常に繊細な描写が多くて染みた。こういう映画を退屈と一蹴するような人とは映画の話したくない。

家族に外からそっと寄り添う、健気で報われない家政婦のクレオが、『東京物語』の原節子(紀子)と重なった。激務の中で妊娠して捨てられて、ぶつかられて溢して、火事にあって死産して、それでも赤の他人の子供を命を張って助ける。

モノクロ映像も左右にパンするカメラワークも、ストーリーとマッチしていて泣ける...。OPの水面の映像から素晴らしいと思った(どうやって撮ってるの?)けど、左右にパンするカメラワークは、過去を少し離れて見守っている感覚の表現だけでなく、動き回る家族や家政婦の忙しなさを見せるのにも効果的だったと思う。

そして、やっぱり終盤の波のシーンがとにかく最高だった。
外国語映画賞を『万引き家族』と争うと言われているけど、奇しくも"最高の砂浜シーン"があるのは共通で面白い。血が繋がっている=家族、ではないというテーマは両者共通だけど、淡々と進むのが切なくてとてもよかった。

フェルミンの武術を繰り返し使った演出も上手で、ただのクソヤローだと思ってたあいつがその後登場した時に訓練が社会情勢と絡んできて驚きがある。『タクシー運転手』もだけど今年はドキュメンタリー的傑作が多い。

音量の緩急(車の音でかい)、車のミラーとか犬のフンで"中流"をうまく表現してる、不気味でテキトーな火事の歌とか全裸の武術とか、どこも印象的だったな〜。
「この召使いが!」もなかなか辛いけど、病院でおばあちゃんがクレオの情報を聞かれた時に何も答えられないのが、彼女の境遇を象徴しているようですごく悲しくなった。いやでも最終的には温かく強い気持ちになれたので、クリスマスにもちょうどいい。
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