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ROMA/ローマのinotomoのレビュー・感想・評価

ROMA/ローマ(2018年製作の映画)
4.2
1970年のメキシコのローマ地区。ある中流家庭に、家政婦として住み込みで働くクレオは、医師である家長とその妻、そして4人の子供達の世話と家事に追われ、忙しい毎日を過ごしていた。そんな中、最近付き合いだした恋人との間に、子供が出来たことに気付くが、そのことを打ち明けると、恋人は姿を消す。また、雇い主の家長であるアントニオ医師は、長期の出張で家を留守にしていたが、実は愛人のもとで過ごしているということがわかる。
今年のアカデミー賞に最多10部門ノミネートされている話題作。オスカー受賞経験のあるアルフォンソ・キュアロン監督が、自身の自伝的物語として作った作品で、すでに多くの賞を受賞している映画。Netflixの作品であり、配信で鑑賞。淡々とある一家の日常を描いていて、BGMもほとんどなし。派手に誇張した感情の揺さぶりはないけど、メキシコの混乱に満ちた時代背景と文化、貧困の様子、かすかにまとわりつく死の匂いとともに、次第に熱を帯びていく物語に引き込まれていく。これこそ、本当に力のある人間ドラマなのではないかと感じる。そして、全編モノクロで作られている美しい映像。光と陰のコントラスト、何度も象徴的に出てくる流れる水の映像、特に冒頭の石のタイルに水が流れる場面の美しさ(その水面に映る空と飛行機!)が素晴らしい。家族が新年を過ごす農場での火事すらも、そこにいる青年が歌う新年の歌と共に、美しく見えてしまう。キュアロン監督の演出が本当に素晴らしい。冒頭の水の映像は、クライマックスのある場面につながっていくのだが、そこで吐き出されるクレオの心情と、より強くなった家族の結びつきが垣間見える場面は、静かなタッチだけど、心を揺り動かされる。印象的な場面だ。
世界的に大絶賛されている理由も納得。配信でいち早く見られるのもありがたい。アカデミー賞の外国語作品賞は間違いないのかなと思う。「万引き家族」残念なり。(韓国の「バーニング」がノミネートから漏れたのも残念)
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