ウマノホネ

永遠の門 ゴッホの見た未来のウマノホネのレビュー・感想・評価

3.5
フィンセント・ファン・ゴッホがパリを出て南仏アルルに向かい、そこからオーヴェール=シュル=オワーズで最後を迎えるまでの、およそ2年間(1888~1890)に彼が感じたことを追体験するような映画でした。

過去の人物としてではなく、生きた人間としてその存在を実感することができる、
監督が "魂に肉体を与える" と讃える、ウィレム・デフォーによるゴッホが、そこにはいました。

ひとり自然の中を歩き、そこで自然(あるいはキャンバス、スケッチブック)と静かに向き合う場面が多く、退屈さや、
手持ちカメラによる画面の揺れに気持ち悪く感じたり、
心地よいピアノ基調の音楽に眠気を催したりもしましたが、

そうしたゴッホの過ごした時間の中に、いつの間にか私も不思議と同調してしまっていました。

ゴッホ亡き今となっては、彼がどういう人物だったのかをこの目で見ることは叶わないし、
今作にしても、映画の登場人物として創られた存在(監督自身、「正確な伝記を描いたわけではない」し「これが真実だと主張するつもりもない」と語っている)であることは間違いないのですが、

そんな彼を見て、生きたゴッホを感じることができる、

それは、劇中で彼が望んでいた通り、彼自身が目にして感じた永遠なる世界(それを表現した絵画)を通して、
鑑賞者が、その世界の一部として彼を感じ取るのと同じことだと気付かされます。

題名にある『永遠の門』とは、ゴッホに出逢えるこの映画自体であり、彼の存在する世界への入り口なのではないでしょうか。