ウマノホネ

アスのウマノホネのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.9
ジョーダン・ピール監督のデビュー作『ゲット・アウト』は、大変な話題作でありながら見逃してしまったので、
今回の作品は是が非でも!見に行きたかった!!

ホラー映画でありながらサスペンスもののようで、目を見開いて最後まで見ることができました。

物語の発端となる1986年、
その前年に「USAフォー・アフリカ」として「ウィー・アー・ザ・ワールド」が歌われ、
そして、今度はアメリカ国内の貧困層救済キャンペーンとして「ハンズ・アクロス・アメリカ」が行われました(が、目標寄付金額の半分にも満たない失敗だったようです)。

現在においては、アメリカ国内の一致団結、という意図より、
なんだか、アメリカの分断、という意味に捉えてしまいます。

興味深いのは、自分たちのドッペルゲンガー“テザード”から逃げるのに、海岸線沿いにメキシコへ逃亡しようとしたところ。
その先の国境には自分たちが築き上げた壁が立ちふさがっているのです。

なんともたくましく、ここまでくると狂気すら感じる母親の姿は、1986年ごろの映画「エイリアン(2)」や「ターミネーター」に出てくる女性像とも重なります。

最終的には彼らテザードの正体は説明されるのですが、

彼らには自分の本体しか殺せないのでは!?
それが済んだらさっさと列に並びにいくのかな…?
とも思ったのですが、そうでもなさそう。
(現に全くの別人を手に掛けているのですが、殺したかどうかは不明)

ではこの侵略行為は、彼ら自身の存在の証明であり、
彼らの目的は自身が語っているとおり「この瞬間を楽しんでいる」ということになる(?)。
(彼らによる「ハンズ・アクロス・アメリカ」は正に「パフォーミングアーツ」という皮肉)