エソラゴト

ストーリー・オブ・マイライフ/わたしの若草物語のエソラゴトのレビュー・感想・評価

-
男性である自分にとって取り分け馴染みの薄い「若草物語」。周りの女性陣(姉・妻・会社の同世代の方)はやはり学校の図書館やテレビアニメなどで折に触れ接してきたせいか、登場人物やストーリーは幼い頃からの確かな記憶として刷り込まれているようでした。

そんな「若草物語」に特別な思いも感情もない自分が何故今作を鑑賞したかというと、グレタ・ガーウィグ監督&シアーシャ・ローナン主演の前作『レディバード』に大変心揺さぶられたことに他なりません。

しかしながら原作も未読、アニメや何度かの実写化された映画も未見、そんな「若草物語」自体になんの縁も所縁もない自分に今作は果たして心に響く物があるのかどうか??…いやいやどうしたもこうしたも、めちゃめちゃガンガンに響きまくりましたよ!

故郷を離れ単身ニューヨークで生活を営む主人公ジョーは時代背景は違えどさながら『レディバード』のクリスティンのその後を描いているよう。(そういえば『ブルックリン』も似た設定だなぁ)

グレタ監督が今作を製作すると耳にした時に真っ先にそのジョー役を名乗り出たと自身が力強く語るくらいこの役に全身全霊を注ぎ込みそして完璧に演じ切ったシアーシャ・ローナンは本当に見事でした。(オスカー獲得も時間の問題でしょう)

私自身、自己主張や自己顕示欲の強い身内のいる環境で育った故に猛烈な共感と特別な感情が湧き起こされたのは控え目で内向的な三女ベスの存在。身も心も離ればなれの姉妹達の仲を繋ぎ留める役割を担った他にも、静かに奏でる優しいピアノの旋律、ジョーや家族への秘めたる想いを語る砂浜のシーンなど心洗われるシーンには思わず感涙。

そんな個性的な四姉妹の影に隠れがちな男性陣も誰一人として性格が悪くて粗暴な人物などおらず、彼女達を陰日向と精神的にも経済的にも支える姿には男性としてというよりも人としての大切な物・大事なことを教えられた気がしました。

「若草物語」弱者な上に最近の流行?と思わせる現在過去をシームレスに描く場面展開に最初は戸惑いを感じながらも、絢爛豪華なキャスト陣が織りなす魅力的な演技と見映えの良い美術や衣装・装飾品に目を奪われつつ、グレタ・ガーウィグ監督の堅実で丁寧な演出力と構成力に酔いしれ2時間強の上映時間を忘れさせてくれる傑作でした。


そして、男性・女性という括りではなくこれからの未来に希望を抱く若い人達に是非観て欲しい作品です。