アー君

恐怖の報酬 オリジナル完全版のアー君のレビュー・感想・評価

4.0
「エクソシスト」「フレンチコネクション」でお馴染みのウィリアム・フリードキンが1977年に監督した映画で、アンリ=ジョルジュ・クルーゾーの同名の小説と映画をリメイクのディレクターズ・カットによる完全版である。

劇場公開時は興行的には不振ではあったが、今回の完全版は配給会社によって端折られたシーンがフリードキンの手によってリアリティのある生々しい描写が甦っており、見どころである豪雨の中の吊り橋を渡るシーンや削除されたバッドエンドなど、アメリカン・ニューシネマを代表する傑作として再評価された作品である。

マフィア、銀行家、テロリスト、暗殺屋が色々な事情で南米に移り住んだアウトサイダー達が、莫大な報酬を手に入れるために、死と隣り合わせの危険な仕事に挑む、人生に再起を賭けた男たちのドラマである。

ニトログリセリンを運ぶ2台のトラックに書かれている名前についてになるが、LAZZARO(ラザロ)はキリストによって蘇生された人物の名前からであり、原題でもあるSorcerer(ソーサラー)は、魔術師や呪術師の意味である。

そして移動中に映し出される不気味な怪物の石像はガーゴイルであり、これは教会に飾られた悪魔や怪物を模った彫像型の雨樋(あまどい)のことで、神によって地獄から遣わされた悪魔が宿っているという俗説がある。男たちがニトログリセリンを届けることができるかどうかを見守る守護神のようにも描かれている。フリードキンが伝えたかったテーマとして人間の持つ恐怖と欲望、死という運命に抗(あらが)う意味として、ガーゴイル像を4人の男の象徴としているのではないだろうか。

ジョー・スピネル(ゴッドファーザーのウィリー・チチ役)が脇役で主演していたのは後に知る事となる。

[ブルーレイによる購入・視聴]
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