カテリーナ

恐怖の報酬 オリジナル完全版のカテリーナのレビュー・感想・評価

5.0
豪雨と強風に煽られるニトログリセリンを積んだトラック

社会に見放された男たちのあの熱い目に痺れた 余計な台詞など排除し 徹底的に映像で魅せる正に映画の中の映画
40年前に観たロイ・シャイダーのあの悲しげな眼差し 束の間のダンスシーンに込められていた 都会の暮らしへの渇望と思慕 ウィリアム・フリードキンの演出は最後まで容赦なかった

油田で爆発が起こり 爆音と共に人が吹き飛ばされる 立ち昇る黒煙と丸く膨れ上がるオレンジ色の炎がまるで獣のように空を焦がす その映像に度肝を抜かれる その後の暴動は言わずもがな当然の成り行きである
罪深き男たちの流れ着いた南米
メキシコのフアレスでも
ここでも 人の命が軽すぎる
ビニール袋に入れられた黒焦げの死体を
トラックの荷台から 運び出す時の
嘆きと嗚咽に その亡骸の重みを確かめるように まるで天に向けて突き上げるように運ぶカメラワークが印象的 決してそうではないのだと 訴えているようだ

劣化して溶け出したニトログリセリン
を命懸けで 運ぶ 男達が 大金に惹かれて
地を這うような生活から抜け出したいと
願い 隙あらば 相手を殺しかねない 凶悪な輩でも 次々と襲いかかる 危機を 乗り越えて行くうちに 芽生えて行く微かな友情に似た感情を見たような気がした それは泥まみれで血に染まった ぼろきれのようなものであっても 私にはとても綺麗だった
ロイ・シャイダーが
夜更けの道を漂うように トラックを運転する フロントガラスに青い光がゆらゆら
と映り 無残に散って行った 男たちの声が聞こえる 幻想的だが 決して
幸福になる事を許してはくれない
カテリーナ

カテリーナ