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セブンガールズのohassyのレビュー・感想・評価

セブンガールズ(2018年製作の映画)
3.5
20年で4回再演したという舞台を、まさに手作りで映画化した作品で、携わった方々の歴史や思い、その熱量ごと楽しむ2時間半。
ロードショーの映画としてはあまりに荒削りではあるけれど、たった5日間で撮りきったというのは恐るべき事実だ。
他人事ながらめまいがする。
仕事でよく「1日しかないなんて!」「3日は欲しい!」とか愚痴っているけれど、これを見たら僕がわがままを言っているみたいじゃないか。
周りのスタッフには黙っていよう。

戦争はそのあまりの特異性から、簡単に僕らの想像を超える環境や人間性を作り出す。
一体どうすれば闇市なんてものが出来上がるのか、無知でぼんやりしている僕には想像すらつかないのだけれど、この娼婦小屋含めて、やはり人間にだってたくましい生存本能が備わっていて、適応していった結果なのだろう。
現在とはそもそも前提が違うのだから、どうなっていたって不思議ではないし、適応していくことに良いも悪いもない。
彼女たちは、毎日喧嘩しながら、時には罵り合いながらも、家族のように助け合って生きていく。
適応している。

もっとひどいこと、例えば生きるためには、騙し合い、殺しあうしかない、という環境だってありえるだろう。
そういえば登場している男たちは、それに近い生き方をしている連中が多く登場する。
個人的な意見を述べれば、やはり男というものは運動能力が高いだけで生存能力は低く、女性の足元にも及ばない。
彼女たちは生きることの本質を見抜いているから、男のようにくだらない見栄やよくわからない欲に縛られたりはしない。

その一方で愛のためなら(それは男であったり家族であったり)命を惜しまないし、自分のことは二の次にする。
それは矛盾しているようにも見えるけれど、実は根っこは同じなのかなとも思う。
自分以外の何かのために自分を犠牲にすることが、結果的に生存の道に繋がっていくという。
ちょっとよくわかっていないけれど。

10年くらい前に興味本位で大阪の「飛田新地」を徘徊したのだけれど、あの雰囲気は、なんというか普段接している世界に比べるととてもいびつに感じる反面、ものすごい生命力を感じた。
当時の僕は入るのはもちろん、店先に静かに座っている彼女たちと目を合わせることすらできなくて、息を潜めて足早に通り過ぎただけ。
目的を持って本気で接していなかったことが、見透かされてしまうのが怖かったのかもしれない。
戦後の混沌の中に存在する娼婦小屋と現代の風俗を一緒には出来ないかもしれないけれど、1人の人間の生き方としては、それほどの違いはないとも思う。

前述のように映画としてはあまりに荒削りで完成度が高いとは言えないけれど、これは今、この流れに乗ること、1人の観客として「参加」するとこで、その完成度の低さを補って余りある体験を得られる。
実際2時間半近い上映を、ちゃんと楽しめたのだからそれはエンターテイメントとして成立しているということに他ならない。
本作の主演・マチさんのアカウント @machi_sevengirls をフォローしたことで観るきっかけをもらった作品、いつかいろんなお話をしてみたい。

これから映画を楽しむには、もっともっと「旬」というものが大事になってくるだろう。
今年はその流れがいよいよ本格的に高まった、節目の年になった。
映画の内容的なことではなく、ムーブメントに乗って映画を体験する。
VHSやDVD、オンデマンドから一周回って、これからはまた映画館での体験が求められるのだろうな。

本作を東京で体験できるのはとりあえず12/27までということで、急いでポストすることにしました。
レビューも荒削りで申し訳ないですが、スピード感も時には大事。
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