GodSpeed楓

スーパーティーチャー 熱血格闘のGodSpeed楓のレビュー・感想・評価

3.8
ドニー・イェン(以下、ド兄)主演の熱血学園モノ。軍人上がりの教師が問題児だらけのクラス担任になる話。要するに"ド兄でGTOやりましょう"という企画である。もう邦題が意識しちゃってるし、この認識からは逃れようがない。

一体、何十年前の脚本なのか?と言わんばかりに既視感の有る展開が立て続けに襲い掛かってくる。熱血学園ドラマのテンプレートを辿っていくのだが、とにかく展開が早い。通常のパターン(という言い方も変だけどね)だと、1話~2話で生徒1人の悩みや家庭の問題を解決していくパターンが散見されるが、15~20分あれば生徒1人くらいの問題は簡単に片付けられる、これがド兄の力よ!(尺の問題だと思うけど)

但し、これは個人的な問題ではあるのだが、僕はド兄が大好きなので価値観がおかしくなっているのか、鑑賞中は「なんて最高に楽しい映画なんだ!」という錯覚に陥っていた。補正がバリバリにかかっているので、恐らく正常な判断はつかない状態だったと言える。爽やかに笑って生徒とコミュニケーションを取るド兄のカッコ良さ。相変わらず前歯がまぶしいぜ!

数人の問題を力業で解決すれば、あっという間にクラス全体に愛されるド兄の魅惑(チャーム)能力。男女問わずに発動しているところを見ると、ディルムット・オディナ以上の威力を秘めている事は間違いない。

基本的に登場人物が"善人"揃いなのか、大体は話せば分かってくれる。別に自分の子どもや先生に問題があったわけでもないのに何故かブチギレて「話なんて聞くかー!」となってる親御さん達も、「相棒」の伊丹さんに似ている校長の、ありがちな「私の話を聞いても納得できないなら、私が教育界を去る!」という「別に勝手にしたらどうでしょうか」と言いたくなる謎の身売り宣言に心動かされていたぐらいだ。落ち目の学校の校長が教育界を去る事が何か大きな影響が親御さんたちにあるのだろうか?この校長も、悪役として跳梁跋扈して最大の敵になるのかと思いきや、アッサリ味方になっていた。流石ド兄だ。

分かりやすく悪役は他に用意されており、学校の敷地を奪うために廃校になってほしいヤク〇(薬丸ではない)が登場する。"暴力"という舞台装置として用意されているキャラを退治するのは、やはり"暴力"であり、それにうってつけな配役をされている。そう、待望のド兄アクションシーン!本作では格闘技ガチ勢みたいな連中をイチ教師が複数同時に相手するので、徒手空拳ではなく環境や武器を有効に使った戦い方をしている。ロールシャッハさん的な戦い方である。汚くたって制圧できれば良いという、生徒を守るためなら全力を出すという姿勢を感じるので好感が持てる。しかしヤク〇稼業に身を落としていた男が、軍人上がりのド兄と互角の戦いを繰り広げる事には納得ができない。"ストーリー展開上、ラストは苦戦しなくてはいけない"というテンプレートからの脱却を待ちわびている。

ベタベタな展開ばかりだったくせに、終盤になって因縁が発覚するという唐突な伏線回収には思わず声が出たが、後から考えれば伏線を張れそうな場面なんて、その1か所しか無かった。というか急に真面目に脚本を書いた感じが出てて逆に笑いが止まらなかった。まさにドラマで言う"シリアス回"を終盤にもってきたのだ。完成度はさておき、これにて1クールを100分に詰め込む事に成功。

愛あり、友情あり、悲劇あり。それでも最後はド兄に関わった人たちが、みんな幸せになる物語である。子ども時代のド兄が幼すぎる点や、ストーリーが何番煎じか分からない上に陳腐極まりない点に目を瞑れば(大半と言ってはいけない)十分に楽しめる作品である。それに、過去類似作品が散々やりつくしてきたからこそ洗練されているのか、非常に観やすい。極端に苦痛を感じるような展開が無いのは素晴らしい。冒頭にも記載したが驚異的な速度で問題を解決していくので、テンポは最高であり、一切ダラけるシーンは存在しない。あっという間にラストシーンまで観られるだろう。

悲しみを乗り越えて未来を見よう!という啓蒙作品みたいなもんなので、この映画を観るなら若い内に観た方が良いだろう。お子さんのいる家族や学生におススメ。

ド兄主演となると評価が甘くなるのが、僕の悪い癖。
GodSpeed楓

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