ねこ

マイ・ブックショップのねこのレビュー・感想・評価

マイ・ブックショップ(2017年製作の映画)
4.0
1959年、イギリス東部のとある海辺の小さな町に、戦争で夫を亡くしたフローレンス(エミリー・モーティマー/メリー・ポピンズ リターンズで成長したお姉さん役でしたね)が書店を開こうとしています。

長年放置されたボロボロの通称「オールドハウス」を買取ります。

ずっと放って置かれたのに、この期に及んで「オールドハウス」を別の用途で使いたくなった(惜しくなったのか?)町の有力者のガマート婦人(パトリシア・クラークソン)はじめとする住民の人々から別の物件を探すようにすすめられたり、やんわりと反対されます。

それでも諦めず開店に向けて準備を進めるフローレンスにも多少の味方をしてくれる人ができ、改装を手伝ってくれる子供たちもいて、ようやく「オールドハウス書店」がオープンします。

40年も自宅にこもっていて町の人からはあることないこと噂され、変わり者扱いされている老紳士ブランディッシュ(ビル・ナイ)は読書好きです。

彼からお薦めの本を送ってほしいとの依頼がきたり、まわりに書店が一軒もないこともあり、徐々にお客も来るようになって、近所に住む小学生くらいの少女クリスティーン(オナー・ニーフシー)にお小遣い程度の金額で手伝いをしてもらうようになります。

書店が賑わってくると、ガマート婦人はフローレンスをどうやってでも邪魔してやりたいようで…

文字通りの古い家が改装されて綺麗になっていく様や、次々に届く本の装丁の美しさ、この時代を生きるフローレンスや、生意気だけれどふわふわな髪の毛のかわいいおしゃまな女の子クリスティーンの色鮮やかで丁寧なつくりのファッションが本当にとても素敵で、それだけでももっとじっくり見ていたかったです!

保守的な田舎町。

かわいらしい家々やひとりひとりは優しい所がある人間たちは、曇った空やこじんまりとした狭い町を象徴するかのような閉塞感も持ち合わせていて。

イギリスや北欧の田舎町を舞台にした作品に良く感じられる、ちょっとどんより、でもその中でもそよ風が吹いて、ゆっくりと時間がすぎていきそうな静かな佇まい。

トーンが低めで静けさを感じる自然の風景とは対照的な、作られたものの明るさ、人の内側の激しさや熱さが交互にやってくるこの雰囲気、好きです。

なんとも複雑な気持ちになりました。

この映画の原作者である、イギリスの文学賞ブッカー賞を受賞したペネロピ・フィッツジェラルドの小説もですが、作中に登場する、
レイ・ブラッドベリの「たんぽぽのお酒」、ナボコフの「ロリータ」などなども久しぶりに読みたくなりました📚

つい値段と持ち歩きやすさで文庫本を買ってしまうのですが、単行本が並んだ本棚ってとっても良いもんですね!
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