エソラゴト

グリーンブックのエソラゴトのレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
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アカデミー賞効果もあってか劇場は立錐の余地も無い満席。コメディ作品故のゲラゲラ・クスクスといった笑い声、シリアスな場面での水を打ったような静けさ、2人が辿り着く旅の終着点では其処彼処からすすり泣く声…劇場全体に包まれる一体感と良い映画を観たという満足感充足感の両方を得られるという心から劇場で観て良かったと思える傑作でした。

が、しかしー。

鑑賞後にネットで評判を辿ってみると本国アメリカでは批判意見が頻発し賛否両論が巻き起こっているとの事…。話題作なのでなるべく事前情報を入れずに臨んだ為、アカデミー賞受賞式後にそういった議論がなされていたとはつゆ知らず。

勿論、批判意見の意図するところも理解出来る部分もありますが…。決して片方だけが一方的に救われる訳ではなく、最初は雇い雇われの主従関係だったものがそれだけでなく人種間をも超えて一人の人間としてお互いがお互いを尊重し助け合い救われていく物語(しかも実話)だと自分は感じただけに、何か安直で短絡的で独善的な見方の様な気がしてなりませんでした。

そしてそういった様々な批判をまるで予見していたかの様なドン・シャーリー役マハーシャラ・アリのパンフ掲載のインタビューはとても的を得ていて改めて彼の聡明さと冷静さを感じました。

『判決、ふたつの希望』『家へ帰ろう』『バジュランギおじさんと、小さな迷子』…相反する立場の者が紆余曲折ありながらもお互いの偏見や誤解を解いていく事で希望を見出していくー。ここ最近作風や語り口はどれも違いますが、理想と現実の狭間に揺り動かされながらも明るい未来を切望する作品が世相を反映してか多い気がしますし、今作もその系譜に当たる作品だと思います。それだけに鑑賞後の爽快感とは裏腹に場外乱闘的な展開には後味の悪さを感ぜずにはおれませんでした。(とはいえ、『ブラック・クランズマン』も勿論観に行きます!)