滝和也

グリーンブックの滝和也のレビュー・感想・評価

グリーンブック(2018年製作の映画)
4.3
アカデミー賞に
相応しい、その語り口
二人の素晴らしい
俳優の演技と相まって
じわりじわりと
引き込まれて行く…(T_T)

色では無い、
一個の人間として…

「グリーンブック」

素晴らしい…名作でした。決して偏る事無く、ブラックとイタリアンと言う人種を超えた二人の物語として。

事実に基づく物語としてクレジットされ、スタートするのですが、それに違わぬさりげない落ち着いた語り口で、その時代の空気を感じさせ、爽やかな感動を残す作品でした。

イタリアンのトニー。粗野で腕っぷしは強く、ハッタリはかますが嘘はなく、家族を大事にする男気溢れた男。

ブラックであるドク・シャーリー。天才ピアニストであり、その才能故に孤高の存在であり、高潔な人物。

その二人が、ドライバー兼マネージャーとボスとして、厳しい差別が残る南部へツアーに向うロードムービーです。ある意味バディものと言っても良いかもしれない。

ロードムービーですから、その中で起こるエピソードで、二人のキャラクターが描き出され、そして心の変化が描かれていくのですが、そこが見事にハマっていました。派手すぎる出来事はなくとも、その一つ一つに意味があり、ジワジワと引き込まれて行きます。

トニーは普通にブラックに対して、差別意識がある人物ですが、ドクの才能にまず引き込まれて行きます。粗野なトニーをドクは最初諌めてばかりですが、その真っすぐで男気溢れたトニーを信頼して行きます。その中でお互いの内面を知り、心を開いていく。そこには一個の人間同士の友情がありました(T_T) 見事な迄に王道を行く内容であり、正にアカデミー作品賞に相応しいですね。

二人の信頼を深めるための小道具の使い方も巧みでした。ひと悶着ある翡翠の小石、フライドチキン、手紙。そしてトニーが拳銃を持っているか否か、全てが伏線として効いています。

トニーを演じたヴィゴ・モーテンセン。体重を増量し、その演技の巧みさと相まって気のいいイタリアの親父になり切っていて、素晴らしかったです。また孤高のブラックとして悲しみを背負うドクのマハーシャラ・アリの演技もまた素晴らしい。ちょっとした表情や台詞回しで、二人共キャラの心情を巧く見せてくれています。

ラストのクリスマスシーンはホントに良かった…。ジワジワ来ていた涙がここで溢れてしまいました(T_T) 人種がどうであれ、同じ人であり、1人1人が違っていても分かり合える事の素晴らしさを語っています。時代性から差別描写は酷いですが、白人にもマトモとカスがいて、黒人もそう。一個の人間としてどうなのか、そこを大事にしている点は好感でした。

誰の命も尊厳も大事なんだと。
滝和也

滝和也