円柱野郎

劇場版『えいがのおそ松さん』の円柱野郎のネタバレレビュー・内容・結末

4.0

このレビューはネタバレを含みます

深夜アニメ「おそ松さん」の劇場版。
高校の同窓会で20歳を過ぎてもニートをやっていることが露見した6つ子たち。
いたたまれず自宅でヤケ気味に飲みふけるが、次に目が覚めるとそこは高校卒業前日の世界だった。

正直言うと「おそ松さん」が映画化されると聞いた時は「アニメの1期は面白かったけど2期はギャグもいまいちだったし、これで長尺になって間がもつものができるのか…?」と、その企画には懐疑的な気持ちがありました。
でもふたを開けてみないと分かんないもんですな。
勝手に期待値下げてすみませんでした!
笑って、笑って、しんみりして、そして最後にクスリとさせられた108分間、ほんと面白かったです!

ストーリーは“童貞くそニート”な6つ子が過去の自分と対峙する内容だけど、ニートになる以前との各キャラクターのギャップが笑いの中心。
となると必然的に6つ子の個性を知っていることが前提でもあるので、完全にファンムービーであることは間違いないか。
でもこれがちゃんと映画としてまとまっているのは、“後悔”というキーワードをメインテーマに据えることで、いかに細かいドタバタを繰り広げても本題からつかず離れず話が進んでいったところだろう。
そして「誰の後悔なのか」という気がかりから始まった話の真相は少し切ない。

この映画の世界を作り出したのは兄弟想いのカラ松の“後悔”もあるのだろうけど、それだけじゃなかった。
そもそも6つ子たちが高校時代の事を覚えていない(3~4年前の事を忘れている?)というのはご都合主義的だが、まあそれはそうでなくては話が進まないので、まあいいや。
結局は6つ子の後悔と、彼らに手紙を読んでもらえることのなかった高橋さんの思い出が生み出した(と感じる)世界だったわけだけど、高橋さん…病弱だったんだな。
あれはどこか遠くの療養所かな。
エンドクレジットで写真風に高橋さん目線での6つ子を見せたりして、言葉で説明せずにこちらに彼女の気持ちを感じ取らせるあたりがニクいぜチキショー。

くだらないギャグアニメを見に来たつもりだったのに、存外に心を揺さぶられた。
先にも書いた通り、話の本筋からそうブレずに話をまとめたことが映画としての満足感を上げたのだと思うけれど、それ以上に「あの時こうしておけばよかった」といった“後悔”という誰もが共感しやすい感情をテーマにしているところも大きいだろう。
最後は少し切ない話でもあったのだけど、前向きな気持ちにもなったし良い映画だったと思う。
円柱野郎

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