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ジョーカーのtetsuのレビュー・感想・評価

ジョーカー(2019年製作の映画)
4.5
サークル時代の友達3人と鑑賞!

理不尽な社会で必死に生きる男・アーサー。これは、彼が極悪非道の犯罪者・ジョーカーになるまでの物語。

公開前、DCコミックス映画最新作ということで期待していると、まさかのヴェネチア金獅子賞!
そんなこんなで公開前になると、映画ファンのみならず、普段、映画を見ない知り合いでさえ「面白そう!観たい!」と言い始め、そんな矢先に友達も誘ってくれたので、これはヤバいことになるぞ、と思っていたら、案の定、大ヒット!!

のちのち調べてみると、近年のDC映画シリーズはヒットしても20億を越えることはなかったようですが、今回は断トツの50億越え!
賞の獲得とジョーカーの圧倒的なビジュアルを押し出し、「なぜ、彼がこんなことになってしまったのか?」とひきつける宣伝が上手く作用したんだろうなぁと個人的には分析しています。笑
(そう考えれば、『パラサイト』の宣伝にも同様なものを感じています。)

と、そんな本作の肝心な感想ですが、
僕自身は、「ジョーカー」という存在を描いた映画として満点だと思いました。

最近のDC映画では、あえて避けられていたシリアス志向へ再び舞い戻り、描かれたアンチヒーロー誕生秘話。
本作にはDC作品として唯一『ダークナイト』トリロジーに匹敵するリアリティと深みがあったように思います。

また、『ダークナイト』で描かれた「バットマンとジョーカーは似た者同士であり、表裏一体」という設定が活きてくる物語でもあり、あくまで肯定的な描き方をされた富裕層が、今作では見事に「悪」へと反転している様が見事でした!

ジョーカーの笑いの秘密、彼が誕生してしまった理由など、これまでの作品とは異なるパラレルワールドゆえに描くことの出来た設定の数々。
そして、これまでのバットマン映画で幾度となく映像化された"あのシーン"の再現などファンとしての見所も多かった本作。

さらには、これまでのアメコミ映画では見られなかったアメリカンニューシネマの系譜を踏む展開や、マーティン・スコセッシ監督の『タクシードライバー』『キング・オブ・コメディ』を想起させる要素などなど、様々な視点から語ることのできる作品としての深み。

それを踏まえた上でのクライマックスに「こんな理不尽な社会なんて、ぶっ壊れてしまえ」と、少なからず思ってしまった自分が怖かったです。

というわけで、人によっては劇薬になりうる本作。
鑑賞した時が、自分にとってあまりにも精神的ショックが大きいタイミングすぎて、本気でジョーカーになりかけたものの、なんとか持ちこたえたので良かったですが、人によって観るタイミングは、かなり選ぶべきかもしれません...。

ちなみに鑑賞して数か月、本作を観た兄と話していると、「自分達がジョーカーになりえる可能性よりも、自分達が無意識にジョーカーを生み出していることの方が怖いと思うで。」とさらっと言われ、かなりゾッとしましたし、共感で済ませようとしていた自分にも、少し怖くなりました。
(そう考えると、劇中に登場した映画館の観客たちのシーンは、私たちに向けられていたのかもしれません...。)

参考
『ジョーカー』マーティン・スコセッシが「見事な作品」と絶賛 ─ なぜプロデューサーを辞退したのか、自ら理由を語る | THE RIVER
https://theriver.jp/scorsese-praises-joker/
(こんな裏話があったとは...。)

『ジョーカー』暴力を誘発すると米国で物議 ─ 2012年『ダークナイト ライジング』銃乱射事件の映画館では上映なし、被害者遺族とワーナーが声明を発表 | THE RIVER
https://theriver.jp/joker-real-world-violence/
(本作のリアリティに対する批判も多いようですが、この事件を思うと、そんなことは考えられなかったです...。)
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