リコリス

マジックのリコリスのレビュー・感想・評価

マジック(2017年製作の映画)
4.8
初ヴィジャイ。インド社会派タミル民族万歳スター任侠映画で、ダンス、サスペンス、アクション、恋愛、ユーモアてんこ盛りもり。「カーラ」のラジニー親分みたいな貧者を守る仁義の男が、悪徳医療関係者に理想も愛する者も命も無惨に奪われる。その復讐を天才マジシャンと貧者救済5ルピーの医師の兄弟が果たす…「バーフバリ」入ってる感の一人三役ストーリー。

片田舎の父の時代から海外も股にかける息子の時代まで、インド社会の変遷、また女性の社会進出とかも分かる。ウキ先生によると南ドラヴィダ人は言語等も古く、北アーリア人の支配の歴史があったとか。女性の地位も高いらしい。映画でも大将の妻はパンジャーブ出身で悪人たちと同じ言語が分かるし、医療関係者などインテリ層は英語。宗教行事も存分に出てくるし、欧米だけでなくインド内の他の民族にもタミル讃歌が凄い。もう少しインドに詳しいと深く分かり楽しめるところもあるかと。

また公開時は医療格差や仁に欠けた医療制度・医療者批判が尖鋭的過ぎ、物議を醸したとか。

本来はインターミッションあるけど3時間イッキ見。笑ったり魅惑されたり泣けたりハラハラしたり目を見張ったり、一分一秒、退屈することなく魂を持っていかれ、しかも最後は胸にズンと残るものがある。ここまであらゆる娯楽をぶち込みながら、真っ当な社会派であるタミル映画、恐るべし。

コロナで沢山の人々が犠牲になった今だからインドだからこそ尚更、医師・医療者の立場マーラン、庶民の立場でヴィジャイ、社会制度の立場でヴェトリの言葉が沁みるし、国保が少子高齢化と新自由主義で揺らぐ日本だって同じこと。

ローズミルク、ホーリー祭、村祭りでの皆で食べるカレー、マーラン義理母の魔除け、アニメが彩るダンス、主張を持つ女性陣の美しさ(でも一番美しいのは母さん)、ルンギーとタミル語スピーチ、伝統楽器も使ったカッコいい音楽…挙げれば切りがないけど全てを凌駕するヴィジャイのオーラ。インディアンムービーウィーク今年も大画面で心からありがとう。
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