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L7:プリテンド・ウィ・アー・デッドのKKMXのレビュー・感想・評価

3.7
 90年代の女性グランジバンド・L7のドキュメンタリー。ロックバンドのジリ貧と貧困をリアルに描いていてかなりギョッとしました。この切り口はリアルでいいっすね。
 ちなみに俺はそこまでL7のファンではないです。代表曲を少し聴きかじった程度。

 リアルパンクなリーダーのギターボーカル・ドニータ率いるL7は色気を封印したストロングスタイルで勝負する女性バンドでした。アナーキーで人を食ったユーモアセンスと、当時新しかったヘヴィなギターリフでシーンに登場しメジャーデビュー。ニルヴァーナなんかと一緒にグランジムーブメントの一角を担います。

 しかし、94年のカートの死とともにグランジは下火に。そこからL7はじわじわと経済的に苦しくなっていきます。ドニータの言葉もトゲトゲしくなっていき、バンド内の雰囲気も重苦しくなっていきます。
 で、1996年にベースのジェニファーが脱退。メモ書きひとつで脱退という、かなりギリギリな感じの辞め方でした。ジェニファーはローディと父の死を乗り越えられなかったとのこと。「バンドが順調なら耐えられたけど、もうつらくて無理だった」というコメントは重い。ドニータたちもジェニファーを支えることができない状況だったんでしょうね。

 そして、ロンドンのロックフェスに出演した日にメジャーから切られ、さらに困窮していくL7。自主制作に戻るも、バンドの内部崩壊はかなり進んでいて、もはや手遅れでした。「収入がキープできず、崩壊していった」という言葉は切ない。
 さらにドニータのクリエイティブパートナーのスージーが脱退。スージーは語ります。「40代になって、生活費も稼げない。健康保険もない。早く辞めて結婚して家庭を築いておけば…私は自分の人生を台無しにした」。この言葉は俺が観てきたロックドキュメンタリーの中で最も悲惨なセリフです。

 こうしてL7は解散します。本作を見る限り、解散の原因は貧困と言えそう。身も蓋もない現実を切り取った辛口のドキュメンタリーでした。


 最後の最後に現代となり、SNSの隆盛でL7が再発見されて再結成し、現在も活動していることが語られます。中年になったL7はルックスもドスが効いており、なかなかカッコいい。ちなみに最新シングルはジョーン・ジェット大先生のカバーで、大先生も参加しています。
 できれば、再結成に至る流れとか、ドニータとスージー、ジェニファーとの関係修復とかも語ってほしかったですね。


 あと、L7はブラジルで大歓迎されてましたが、ラモーンズもそうだったように、ブラジルはパンク魂を持ったバンドを歓迎する傾向があるようです。数万人規模のスタジアムライブの時に、チンポ丸出しでノリノリになっているファンが映っており、ブラジルはパンクの国であると確信に至りました。裕也もブラジルツアーすれば良かったのにね!
 90年代のドラッグについても面白いコメントがありました。「当時、ヘロインはその辺に落ちていた」。スゲーな!L7のメンバーもそれぞれドラッグにハマったらしいですが、本編ではほとんど触れられていないため、大したことなかったのでしょう。しかしまぁ、その辺に落ちてるって…


【L7リンク集】
https://youtu.be/tMykR5v8-XA
Pretend We Are Dead
タイトルにもなった代表曲。ロンドンのTV番組のライブで、ラスト近くでドニータがズボンを脱ぐ。アナーキーなパフォーマンスながら、さほど問題にならなかったらしいです。
曲はかろうじてポップと言えなくもないが…


https://youtu.be/ZWQfvKRx-jw
Shitlist
再結成後のライブ。ベースのジェニファーがかなりデカくなっている。
ドスは効いていてカッコいいけど、やはり曲はポップさに欠ける。彼女たちのマニア止まりの音楽性は、そもそもメジャーとは食い合わせが悪かったのでは、と推察できます。はじめからインディで手堅くやっておけば、スージーも後悔しなかったかも…
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