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マチルド、翼を広げのSPNminacoのレビュー・感想・評価

マチルド、翼を広げ(2017年製作の映画)
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心を病んだママと娘マチルドの物語。ママらしいママと平穏に暮らしたいのに、ママは自分を置いてどこか別の世界へ行ってしまう。一緒に居ても不安で落ち着かない生活、そこへ住み着いたフクロウがマチルドに寄りそう。
人の言葉で会話するフクロウはイマジナリー・フレンドというよりも、逆に現実的な「大人」の立場だ。マチルドが欲しいのは友達でなく、頼れて相談できる保護者だから。むしろマチルドにとってイマジナリーに近い存在なのはママの方だ。ママとはかろうじてファンタジックな物語や詩、ゲームを通じて会話するしかなく、現実は共有できない。ママの苦しみもすごく伝わるし、状況はとても辛いのだけど、やがてイマジナリーフレンドと離れ、子供時代の終わる時が来てしまう。それでも…エンディング曲が全部物語ってた。
想像力豊かで責任感の強いマチルドは、日々届かない思いを何かに託して必死に駆け回る。教材のガイコツ、歌、クリスマス。フクロウは自分の分身でもあるから、寂しさも悲しみも怒りもわかってくれる。マチルドだけが聞く声(落ち着いた男性の声)、マチルドを見守る目。表情も知性もフクロウだからこその説得力。しかしパパは娘には良い父親かもしれないけど、いやどうなんだ…って腹立たしかったり。最後マチューにちょっとほだされてしまったけどさ。
扉の外へ羽ばたくフクロウ、水に漂うマチルド、幻想的だけど静かに寄る辺ない浮遊感と死のイメージが全体のトーンを統一してる。冒頭、学校で一人不機嫌顔のマチルドを追うカメラが一瞬静止したり、スローモーションしたり、そこにクレジットが重なる一連の流れがすごく良かった。子供のがむしゃらな躍動感は初期トリュフォーみたい。
マチルド演じるリュス・ロドリゲスはとても感情豊かに切なく愛らしく(しかもお洒落)、大人にならざるを得ないけど子供のまま、って顔つきが雄弁。でも子役にヒヤヒヤする場面をやらせるフランス映画…。監督主演ノエミ・ルヴォウスキーは良くも悪くも少女趣味なんだなあ。
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