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ハイ・ライフのギルドのレビュー・感想・評価

ハイ・ライフ(2018年製作の映画)
4.1
A24のSF映画新作で楽しみにしていた作品です。
閉鎖的な空間と法的支配の解放で人間の秘めた欲求を抑圧していたものがどうなるか?を描いた作品で、人間の本質的な性質をテーマにした辺りは同じA24配給作品の「アンダー・ザ・スキン」に近いです。
…いわゆる実家暮らしでは恥ずかしいことが出来なかったけど、一人暮らしの時に恥ずかしいことを気にせずにやれる的なノリです(笑)

 予告編以上にバイオレンスな描写が多かったのは意外で、SFよりはスリラー要素の方が高いかな。
随所にギョッとするショック描写を素っ気ない無造作で放り込んだり、過去作ガーゴイルのような凄絶な性描写の悍ましさ/大人のエロスを披露するなど、監督の持ち味をしっかり掲示しつつインターステラーのブラックホール演出にタイムリーさを盛り込んだSF的映像美を魅せるバランスが素晴らしかったです!そこが本作のSF映画としての独自性を見事に描いていたと思う!
特に性描写のエロさと悍ましさが入り混じる演出がエグくて、ディブス医師ことジュリエット・ビノシュがボックスに入るシーンとロバート・パティンソンが就寝しているシーンで「この映画やばいな・・・」と口に出てしまうほど前衛的でした(笑) 例えると表参道のESPACE LOUIS VUITTON TOKYOのシアターで見た退廃的だけど同時に美しい感じ。

 SF要素もセットデザインから漂うレトロな感じが良いけど、SF映画として見ない方が良いと思います。
例えばアンダー・ザ・スキンはSF要素・記号の引用・スリラー要素共に高い水準でストーリーラインに落とし込まれた素晴らしさがあったけど、ハイ・ライフは持ち味の良さをストーリーラインの鈍足さで分かりにくくなってると思います。
スリラー要素やブラックホール演出は良いものの、ストーリーラインの複雑な時間感覚の作家的意図がどうしても呑み込み辛くさせていたし、序盤で張り巡らされた伏線もお節介気味に感じてそこで少し退屈しました。あとモルモットの囚人/ディブス医師ともに動物的軋轢に溺れる姿をメインに映しているせいか、感情移入がし辛かったです…それによって閉鎖的な空間の絶望感が薄れた気がします。

 でもテーマ設定・映像美・監督の持ち味を活かした静的/性的なSFスリラー映画としてオススメできる作品と共にA24配給作品の凄みを「魂のゆくえ」に続いて味わえる一作でした!クライマックスのロバート・パティンソンと娘が立つワンシーンの高級感と多面的展開は秀逸なので、まだ見てない人は是非鑑賞してみてね。
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