踊る猫

サマー・オブ・84の踊る猫のレビュー・感想・評価

サマー・オブ・84(2017年製作の映画)
4.2
乏しい鑑賞歴から思い出したのは、例えば『ドニー・ダーコ』や『イット・フォローズ』のような映画だった。なにが起こるかわからない不気味な場所として、郊外を描いてなかなか健闘している。ミステリとしてどんでん返し/ツイストは効いているが、もう少しストーリーの概要を冒頭でわかりやすく説明して欲しいな、と思わなくもない。でもその粗さが逆に味になっているとも言える。つまり、自分たちの心象風景をそのまま郊外という土地に投影して描いた映画ではないかと。だからこの映画は理屈を超えて伝わるエモさがある。80年代の空気をマーケティング感覚抜きで生々しく再現すべく選ばれたのがチープなシンセによるBGMであり、随所に見られる看板ないしトランシーバーでの会話といった工夫であり、女の子とのエッチな妄想に頭を膨らませている男の子たちなのだろう。突っ込みどころがないと言えば嘘になるが、しかしこのエモさ(悪く言えば臭み)は捨て難い。アメリカの中流階級で育った男の子を描いた夢想/脳汁による珍品がまたひとつ誕生した。
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