アールはデイリリーの栽培をする花の業者。日々の手入れと品評会、その世界の人たちとの時間に明け暮れ、娘の結婚式にも出ず、家庭を省みない。時は流れ、老いが彼を襲い、農園が抵当に。そんなとき、ひょんなことで優良なドライバーだというところに目をつけられ、「運び屋」の仕事を請け負うことに。初めは孫のためにと中身も知らずに引き受けるが、途中で自分の仕事に気付いてしまい…
イーストウッド作品に外れなし、は今回も健在。しかも久しぶりの本人出演。飄々としたアールのあり方はクリント本人の持つものか、役作りなのか。あまりにしっくりきていて思わず見守ってしまう。運転しているご機嫌なアールがかわいいし、長年の家族との溝が氷解するあたりではじんわりと泣ける。ブラッドリー演じる麻取り捜査官とのダイナーでのやりとりや、売人の男への教示には退役軍人としての誇りも感じ、脚本が見事だと思う。口は悪いがレイシストではない。好感度の高い白人だ。文字通りのあぶく銭を手にしていくアールは何でも買えたのに時間は買えなかった。家族との断絶の中、「ありがとうアール」と言われることに喜びを得ようとしているかのような振る舞いには切なくなり、胸がチクチクした。
余談としてはブラッドリーがかっこいい。ラストのあたり、人としてのアールへのリスペクトを感じる言動は一層イケメンを引き立ててたな。アンディ・ガルシアもよかったけど、初めてブラッドリーのモテメンぶりがわかった気がする作品になった。
人間、記念日を忘れないっていう日々の小さなことを貫くことこそが一番大切なこと、とアールに教えられた。ラストのラストにホッとして涙…