へたれ

ウエスト・サイド・ストーリーのへたれのレビュー・感想・評価

3.8
良かったとこ1 America
この映画の良さが全部集約しているのが「America」のシーン。61年版では屋上で夜に踊っていたこのシーンを、朝の路上に変更した。これによって、歌詞とシンクロするようにアメリカ社会を表現できるようになり、ダンスにも開放感が出てきた。さらにアメリカに希望を持つ人の象徴として移民の子供たちもダンスに加わり、アメリカを夢見る移民たちの歌としてより前向きな印象も残した。少なくともこの1曲だけは61年版を上回ってる。

良かったとこ2 芸達者な俳優たち
まずアニタ役のアリアナ・デボーズと、マリア役のレイチェル・ゼグラー。終盤の「A boy like that」は、61年版でもアニタの心変わりが少し唐突だったけど、今回はこの2人の歌声で愛の尊さで理解を通じ合うシーンがうまく表現できていた。リフ役のマイク・フェストと、ジェッツたちのダンスも今どきのシャープなダンスももっと見たかった。リタ・モレノはカメオ出演程度かと思ったら、ちゃんと「Somewhere」歌ってるし、しかも祈りのような歌声が昔とは違った魅力を出していた。

良かったとこ3 技術の進歩
前の映画から60年経ってるので、様々な点で進化している。まずカメラが自由に動くので、臨場感が増している。特に室内で効果的で、マンボやクラプキ巡査の歌は楽しさが増した。音響と録音も60年前とは比較にならないぐらい進歩しているので、オケの低音も綺麗に響くし、効果音と音楽をシンクロさせることも今だからできる。

良かったとこ4 題材への現代的な取り組み方
スピルバーグとトニー・クシュナーならちゃんと触れてくると思った移民問題へのアプローチがやはり的確。建設前のリンカーンセンターから始まり、61年版よりも時代描写が明確。特にジェッツたちの社会的な立ち位置を明確にしたおかげで、どちらの勢力もいずれ社会から排除される者たちという関係が明らかになった。

ダメだったとこ アンセル・エルゴート
まず、トニーにあるはずのジェッツに対する兄貴分的要素を最初から表現できていない。そして、マリアと出会った瞬間の一目惚れを表現できてない。表情が乏しく、ニヤけるだけなので、時々何を考えてるか分からない状態にすらなり、主人公としての体裁を成してない。それに輪をかけて、歌唱力が怪しくて、安心して歌を聴けない。
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