むぎちゃ

テッド・バンディのむぎちゃのレビュー・感想・評価

テッド・バンディ(2019年製作の映画)
3.0
うっかり忘れてた。そう、奇妙な映画だったんだ。


その残忍さと裁判官の名言などで有名な、みんな大好きテッドバンディ。
仮に知らなくても、メインビジュアルやあらすじでも読めばこの映画の大体は予想出来るだろう。

だがしかし奇妙だった。
劇中、彼の口からは勿論、映像としても殆ど彼が犯人である事を描いていない。
口を震わせ目を潤ませる表情は、まるで本当に彼は無実なのでは?と思わせられてしまう描写だ。

最後のテロップには自供の事実が記されていたが、それ以外に彼が犯人であることは回想シーンと指で窓に「糸ノコ」と書いたシーンだけ。

しかもその回想もラストにちょいとだけ。うーん奇妙な。

どの段階まで否認し続けてたかは詳しく知らないから、自供じみたセリフを言わないのはまだ分かるけど、映像の描写すらほぼ無かったのはとても不思議。

さあ、その理由は当然、この物語の視点が彼女だからだね。
いくら外堀が埋められてもどこかで彼を信じ続けていた彼女の視点だからこそ、彼しか知らない描写はほぼ存在しなかったわけだ。
彼女が(写真でだけど)実際に見た死体だけその背景が一瞬とはいえ描かれたところが肝。

そこを自分の中にストンと落とせればこの映画は終始心が締め付けられるような気持ちになる。
封筒を開けるまでの10年間、自身を支えてくれる人達はいても、それでも彼女は苦しみや葛藤に苛まれていたのかなと思うと、キツい。

この手法は既に名の知られていて、なおかつ彼を描いた映画が多数存在しているからこそ成り立つんだろうな。

そういった意味ではある種の変わり種映画だと言えるかもしれない。
ほかの映画ありきと言うか…。
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