sugar708

ザ・ピーナッツバター・ファルコンのsugar708のレビュー・感想・評価

4.3
何かが欠けている二人が、その隙間を埋めていく。

家族に捨てられ外の世界を知らないザックと兄を失い様々な感情を忘れたタイラー、2人が出会い旅をすることで友情を超え家族になる。近年、万引き家族をはじめ各国で擬似家族を取り扱った作品が注目を集めていますが、本作は心温まる家族の物語だったなと。

この手の映画ですと、有名なところでは「八日目」「レインマン」などがありますが、それに並ぶ新たなロードムービーの秀作だと思います。

話は少し逸れますが、前にアメリカのWWEにザック・ゴーウェンという義足のプロレスラーがいました。今も現役で活躍しているそうですが、本作で登場するザックと重なる部分は名前だけではないのかなと。

それぞれの事情を抱え逃避行をはじめた2人ですが、その足は確実に昨日より前へ人生を進めていく。ザックの優しさ、温かさに触れ、心の傷を癒し再生していくタイラー。一見、ザックがタイラーに助けられているように見えますが、真に救われていたのはタイラーという構図も王道ではありますが美しかったです。

逃避行ロードムービーには追撃者がつきものですが、それが本作では可愛く美しいダコタ・ジョンソンというのも印象的でした。

二人に限らず、エレノアもクリントも、この映画に限らず大抵の人間は何かが欠けている。それを互いに埋め合い、支え合うことは決して悪いことではないということをこの映画で改めて感じました。
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