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オオカミの家のHKのレビュー・感想・評価

オオカミの家(2018年製作の映画)
3.6
予告編を見て俄然観たくなったアニメーション作品。
ようやく福岡にも来たので鑑賞して来ました。
南米のチリの作品。そういえば、先日観たドキュメンタリー『83歳のやさしいスパイ』も同じくチリの作品でした。初めてチリの映画を立て続けに観たことに。

しかし、いろんな手法のアニメーションを観てきたつもりですが、こんなのは初めて。
いわゆるストップモーション・アニメではあるのですが、2次元と3次元が混然一体。
絵画と立体のオブジェがメタモルフォーゼして切れ目なく繫がり、映画そのものが現代美術館を訪れて様々なアートを観て歩き回っている感じと言いましょうか。
強烈なインパクトがある反面、歩き疲れてたまに眠くなったりもします。

お話の舞台は1960~1970年代と思われるチリ南部。
あるドイツ人共同体の生活に耐えられず、森の奥の山小屋に逃げ込み2匹のブタと一緒に隠れ住む少女マリアが辿った悪夢の物語がおとぎ話風に描かれます。
マリアの妄想の中、“ペドロ”と“アナ”と名付けたブタは徐々に人間の姿になり・・・

このドイツ人共同体が独裁・洗脳・拷問を繰り返していた「コロニア・ディグニダ」という実在のコロニーがモデルであり、それがチリの黒歴史であることも初めて知りました。
本作の作者二人は、もしもこの共同体の指導者がプロパガンダとしてアニメを作ったらどんな作品になるかと想像しながら創った作品だそうです。

これまでに観たストップモーション・アニメと言えば、人形を少しずつ動かして撮るイメージでしたが、この作品では決まった人形キャラが存在せず、都度、カットごとに人やブタのキャラがゼロから創作されているというイメージです。

制作風景を見て舞台となる各部屋がミニチュアではなく実物の部屋だったのはビックリ。
思っていたより全ての物が大きく、それであんな細かな作り込みが出来たのかと納得。
まるで部屋そのものをアトリエ兼キャンバスにした創作活動といったところ。

作者のクリストバル・レオン&ホアキン・コシーニャの二人はそれぞれが絵画や彫刻作品を発表するまだ若手の芸術家だそうですが、本作の制作期間は5年だそうです。
正直、話の内容はよくわからないところもありますが、不思議なアート作品であり不気味なお伽噺を堪能した気分(少し寝ましたが)。
「マリ~ア~♪」
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