ハル奮闘篇

天国から来たチャンピオンのハル奮闘篇のレビュー・感想・評価

天国から来たチャンピオン(1978年製作の映画)
5.0
【上質なロマコメ! 封切時のタイム誌レビューの絶賛っぷりがスゴい】 
<2021.12.1 「デイブ・グルーシンの主題曲をYouTubeで」を追記>

 子供の頃に見たアニメ「トムとジェリー」の「天国と地獄」というエピソード。
 階段を落ちてきたピアノに押しつぶされて死んじゃったトムが、Long & Winding なエスカレーターで雲の上に昇って行くと、天国行きの列車が待っていて、死んだ猫たちが乗車手続きの列を作っていました。そこは「この世とあの世を繋ぐ中継地点」。当時、初めて見るその不思議な世界がすごく印象に残っていました。
 この「天国から来たチャンピオン」でも序盤に「中継地点」が登場します。

 人気アメフトチームのクォーターバック(QB)のジョーは、大試合スーパーボウルを目前に控えたある日、自転車で対向車と衝突! 気がつくと雲の上に。
 ところが天国行き飛行機の「搭乗者名簿」を調べてみると、本来ジョーにはあと50年もの寿命が残っていて、ここに召されたのは新米天使のミスだったことが判明します(「新米天使」って「素晴らしき哉、人生」にも出て来ますね)。

 すぐさま地上に舞い戻るも、彼の肉体は既に火葬された後だったのです! 試合に出るためには、天に召される瞬間の他人の身体にジョーの魂が入り込むしかない。 かくしてジョーと天使長は、「死期の迫っている男たち」を見て歩き(笑)、手ごろな身体を物色するが、なかなかフットボール向きの肉体を持つ人物には出会えません。

 ようやく見つけた手ごろな身体を持つ人物は、大会社の若き社長。 その動向を見張っているときに、美しい女性ベティをみかけてジョーは恋に落ち、その社長の身体に入ることを決めます。
 社長は強欲で冷淡な男で、妻とその浮気相手の男に命を狙われていました。麻酔で眠らされ、バスタブで溺死させられた、その瞬間にジョーは彼の肉体に入り込みます。ピンピンして浴室から出てきた社長に、妻たちは心臓が飛び出しそうなほど驚いて絶叫します(笑)。

 その日から社長は人が変わったように善人になり(実際、魂は変わっているんですが)、社会貢献を始め、試合出場のためにトレーニングしながら、ベティとの恋を温めていくのですが、彼の奇怪な行動に疑心暗鬼になる妻たちは隙あらばと彼の命を狙っていて…。

 演出、脚本、音楽、主役から脇役までの豪華俳優陣。どこをとっても上質なロマンティック・コメディです。(そうそう、主演のウォーレン・ベイティはシャリー・マクレーンの実の弟です。)

 他人の身体に乗り移った主人公のジョー。魂はジョーのままでも見た目が違うから、親しい人々にも彼がジョーであることを信じてもらえない。観客にはそれが可笑しくも、もどかしい。そこで相手に自分がジョーだと信じさせる手段に、脚本の妙が見えます。

 そしてクライマックス。果たして社長の肉体をもつジョーはスーパーボウルで活躍できるのか。彼の命を狙う二人組は。そしてベティとの恋の行方は。 


【以下は、封切時の米タイム誌のレビューです】
 「この映画はこの夏いちばんの人気作になる確率がきわめて大きい。大笑い、陰謀、殺人、スーパーボウル、達者な脇役陣、そしてヒーローとヒロインのロマンスなど、この映画にはすべてがある。(中略)始めから終わりまで、子供にも大人にも、この映画はノンストップの、そして単純で喜びに満ちた、楽しさそのものである」。 


【デイブ・グルーシンの主題曲をYouTubeで】
 この映画の音楽は名匠デイブ・グルーシン。グッバイガール、チャンプ、黄昏、トッツィー、恋におちて、恋のゆくえ ファビュラスベイカーボーイズ。みんな音楽が印象的だった映画ばっかり。
 で、「天国から来たチャンピオン」の主題曲がいくつかYouTubeに。「予告編を検索」機能から見られますよね。個人的には4分35秒の「天国から来たチャンピオン Heaven Can Wait」という動画がオススメです。スティル(静止画)を重ねて、映画の雰囲気をよく伝え、且つネタバレせず、音楽を堪能できます。良かったら、まず動画を見て、この映画の世界に触れてください。