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ウィーアーリトルゾンビーズのBigsのネタバレレビュー・内容・結末

3.9

このレビューはネタバレを含みます

昨年「プー金」との衝撃的な出会いを経て、長久監督初長編作を鑑賞。
長編でもやり切れるのかと一抹の不安はありましたが、充分楽しめたし、何より実験として面白かった。

語り口は「プー金」同様、とにかくキャッチーで、珍奇且つポップな記号的描写を詰め込んで密度を高めるというもの。奇抜なんだけど、観客を置いてきぼりにしたり、本当に不快感は与えないというのが重要で、広告マン的な感覚なのかな。
そして、その密度こそが映画の大きな推進力になっている。話の展開とか人物造形について観客に考える隙や余白を与えず、観客も一個一個の描写が気持ちいいと感じれば、その流れに乗っかって見続けられる。記号的だろうが軽薄だろうが力技で押し通す。
また、これらの描写が微妙に韻を踏んで構成されているので、一個一個が分断されにくいというのも良かった。ここらへんは凄く気を遣ってるだろうし、上手いなと思いました。

今回も長久節が冴えわたってました。奇をてらったケレン味全開のカメラワーク・CG/合成・画面構成・フッテージ・ギミック、珍奇なアイテム・セリフ・キャラクター。
印象的なのを挙げるとキリがないけど、
ヒカリのマンションで巨大金魚が窓から覗く(台湾映画「熱帯魚」を思い出した)
葬式の鯨幕の白い部分だけをトラが歩く
「生きたさ、すご」
「めっちゃ臭くなって死んでた」
「悲しいけど辛くない♩」
「タコの頭脳は3歳児、俺の頭脳は4歳児」
アイテムでは、ダボダボの白ブリーフ、車のエンブレム、へその緒、臓物みたいなスライム(?)

ただ気になったことは以下。
こんな実験が商業映画として通用するチャンスは何回もないだろうから、これからどうやって撮っていくのかというのが気掛かり。実験だとしたら同じこと何回もやってもあまり価値はないし。長編映画として興味を持続させるとしたら、いずれ人物をもっと人間的に描くことと向き合わないといけないと思うから。
あとは、割と普通の映画的な場面だとこの人の今の力量みたいなのが露呈しちゃった気もする。一つは動的な場面。親が自殺しちゃった子の回想で父親と殴り合う場面が初めてアクションらしいアクションだったと思うけど、割と普通だしあんまりテンションも上がらないなぁという感じ。
もう一つはクライマックスとなるゾンビーズのラストライブ。ここは手持ちカメラのブレた映像だったけど、退屈で誤魔化してるようにしか見えなかった。ストレートなクライマックスというか盛り上がるシーンは微妙だった。
それと、終盤事故ってからの主人公の内面描写は、映像としては面白いとこもあったけど、やっぱりそもそも人間的に描いてないんだからどうでもいいと思う部分もあって長く感じてしまった。(中島哲也監督の「来る」での岡田准一と小松菜奈のやりとりがどうでもよかったのと同様)
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