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ジョジョ・ラビットのLEOのレビュー・感想・評価

ジョジョ・ラビット(2019年製作の映画)
4.8
この映画も劇場で観たいと思っていたけれど、諸事に追われているうちに終わっていた作品。
う〜ん、何と言ったらいいんだろう?
「面白かった」ではなく、「心の底から人を愛したくなる戦争映画」とでも言うんでしょうか、とにかく「いい映画を観た!」と言うしか適切な言葉が見つからないという感じです。

もう冒頭からビートルズやデヴィッド・ボウイなど、第二次大戦下では完全なる敵国のポップソングを流しまくりで(当時はもちろん存在すらしなかったが)、特にヒトラーに熱狂する大群衆の記録映像にビートルズの「I want to hold your hand」のドイツ語版をかぶせるなんて何という風刺のセンス!

ストーリーも「グーニーズ」や「スタンド・バイ・ミー」などの天真爛漫なジュブナイルもののようなテイストがあり、少年が年上の女性に憧れる爽やかな恋愛ものの隠し味もあり、社会を風刺するブラックコメディ的なユーモアもあり、そしてもちろん目を背けてはならない戦争ものの悲哀も盛り込んでいる。
そして先述した音楽も、絵面の作り方も、ストーリーテリングも、上述のような多様な要素を盛り込んでいながら、全く淀みなく進むのが素晴らしくレベルが高い。

スカーレット・ヨハンソン演じる母ロージーは、自身が反ナチスでありながらも、ナチスを崇拝している(しすぎて妄想上の友達が“あの人”であるという)ジョジョを全く否定することもなく、自らの意見を押し付けることもせず、愛情たっぷりに息子の生活を守ってあげていた。
しかし、ユダヤ人とユダヤ人を匿って処刑された人々を見るシーンではしっかりとジョジョに現実を見せつけ、遠回しに社会に飲み込まれるのでなく自身で考えるようにも促している。

もう何て素晴らしい母親なんでしょう!
やっぱり子供にはたっぷりの愛情と、しっかりした教育が大切なんですね。
その愛情表現の素晴らしさに、自分はもうこの辺りで内心ウルウルでしたよ。

そしてジョジョがロージーの足にしがみつく“あのシーン”の衝撃と言ったら…。
さらにそれを靴だけで表現するなんて…!!!

そしてそして、主人公ジョジョの成長を靴紐を通して表現するなんて!!!!!

身も心もナチスに支配されロージーの愛もダンスも拒絶していた彼が、自身の体験を通して自分で考え判断できるようになり、エルサへの愛を自覚して最後に2人でダンスを踊る。

この映画の素晴らしさはこうした映像はもちろん役者の演技も、何もかもが説明しすぎず足りな過ぎずという絶妙なバランスで描かれているところだと思う。
敢えて不満を挙げるとすれば、キャプテンKの同性愛者っぽい振りを見せといて投げっぱなしにした所。
その後触れないならあのシーンいらんくない?

ラスト、怯えながら外に出ようとするエルサの靴紐をジョジョが結んであげた。
きっとこの2人には、明るい未来が待っているんでしょう!

最後に流れるのはデヴィッド・ボウイの「Heroes」。
ベルリンの壁の傍で落ち合う、つまり閉ざされた環境で落ち合う恋人達を見て着想を得たという曲のドイツ語版です。
やっぱりこの監督、天才と評されているだけある。

…しかしヨーキーは痩せねーなぁ(笑)
LEO

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