このレビューはネタバレを含みます
ナチス狂いの少年が、ユダヤ人の少女と出会って変わっていく心を描いた物語。コメディ調に展開はされども、背景には深刻な差別と戦争があるということを事あるごとに思い起こさせてくる。
子どもの持つ純心さは時として残酷であり、なによりも心苦しいのはそうさせているのが大人であるということ。
子どもが何を信じるかはもちろん子どもの自由であるけれど、その選択肢は親次第でもある。仮に自分が親になったとき、子どもにどんな選択肢を与えてあげられるか。
物語の上で母親はジョジョに愛の強さを教えた。冒頭で痛快に流れたのはビートルズの「I Want To Hold Your Hand」だった。
「ヒトラーの親衛隊に入ってやるんだ！」というナチスへの愛が、別の愛へと変わるとき少年はどのような強さを見せたか。
差別や戦争を描いていながら、通奏低音のように愛の強さというテーマが流れる。
監督自らが演じたヒトラーのコミカルにもシリアスにも化ける演説、自分がどの目線でその言葉を聞くかでどのようにも受け取り方が変わり、自分ももしかしたら"そっち側"になる可能性を存分に秘めていたかもしれないということを痛感させられる。
踊るという行為を伝えるため、ジョジョのあどけなさや頼りなさを表現するために用いていた靴というモチーフが美しく表象されるラストシーンと後半のクライマックス。特に後半のクライマックスは、直前のほのぼのした蝶のカットから含めて物悲しいけれどありあまる美しさを讃えていて、これより胸にくるシーンは今年いっぱい見られないんじゃないかと思うほど……！
