静かなる恫喝と
忖度の中で…
フィクションか
ノンフィクションか
メタフィクションか
その境界線の危うさよ
「新聞記者」
日本アカデミー賞に輝く日本流ポリティカルサスペンス。嘗て懇意にしていた上司が自殺した内閣調査室員と闇に事実を葬られ自殺した父を持つ新聞記者が内閣府の闇に挑む…。
ストーリー的には上記となるが、そのスタイルは余りにもウェットで日本流かつ疑惑として存在したノンフィクションの一面を持ちながら、その筋立てでフィクションとなる結果が余りにも大仰であり、メタフィクションにもならない…。
正直前半部はかなり期待したのだが、後半そのスキャンダルの内容が大仰過ぎて一気に陳腐化し、残念ながら興味の半分を失い失速した…。昨今の相棒レベルのストーリーに落ち着いたと言う所か…。
相棒自体、政府関連が敵として現れた時には、あり得ない様な内容になりがちでそれはある意味フィクションです!と言い切れる内容にして、国からの批判を受けない様にしている一面もあるだろう…勿論ストーリー的に面白さを増すためだろうが…。
残念ながら、そのスタイルに後半はなってしまう。前半はメタフィクション的な事実をなぞらえる様になっており、日本でもこの手の作品が来たかと思ったのだが…。
そもそも…アメリカでは大統領の陰謀と言うノンフィクション(一部隠された部分はあるが)の金字塔がある。大統領の疑獄を新聞記者二人の活躍で暴いた事実が存在し…見事な作品に昇華している。その存在は余りにも大きい…。
事実として存在した正義とフィクションとメタフィクションが綯交ぜになったストーリーを比べるのがそもそも…間違いなんだろうが、余りにもアメリカと日本の差を見るようで…。
ここ数日でも語られていた様に重大事件に対し、日本の新聞、TVは忖度する。海外はしない。作品の様に静かなる恫喝があるかはわからない…。だが姿勢が違いすぎる…その裏にはこの作品の様に、悪に対しても家族があり、犠牲を出さない様にしているのかもしれない。その背景があるかはわからないが…それが作品にも浮き出ていて日本流のウェットさが存在している、それがらしさなら○なのだろう…。
内閣調査室の恐ろしさをアピールするため、青基調の画面の金属質なイメージ、碇ゲンドウ並にメガネが光る田中哲司の悪役ぶりは彼がノッて演技しているのがわかるし、楽しいがあからさまなステロタイプな悪なので…(笑)
松坂桃李は苦悩する青年をやらせると中々巧みだし、表情の表現力も高い。ただ…シムさんは…?何故に彼女が必要だったか…アメリカ育ちの日本と韓国のハーフが必要な理由がない。それとも各事務所から役故に断られたのか…。忖度しそうだが…。
う〜ん、各役者がそれなりに巧みで日本流のウェットな展開でリアルな政治サスペンスを真摯に作りましたと言う結果は悪くない…TVや新聞では到底無理だろうし。ただ…重く苦しい故に面白いと言う訳では途中からなかった…。私好みではないようだ…。