ひろぽん

黒い司法 0%からの奇跡のひろぽんのレビュー・感想・評価

黒い司法 0%からの奇跡(2019年製作の映画)
3.9
アメリカ南部のアラバマ州で、若き弁護士ブライアン・スティーブンソンがハーバード・ロースクールを卒業した後に選んだ道は、弁護士を雇う余裕のない貧しい人々を弁護するという仕事だった。彼の初めての仕事は、死刑を宣告されたウォルター・マクミリアンの弁護であった。決して平等に扱われることのない人種問題をかかえる中、ブライアンは貧困者や黒人に対する偏見に立ち向かっていく。ブライアン・スティーブンソン著の回顧録『黒い司法 黒人死刑大国アメリカの冤罪と闘う』が原作であり、実話に基づいた物語。


黒人というだけで物的証拠も無いまま逮捕され、ろくに裁判もされず刑務所にぶち込まれ、十分に検証されないまま死刑囚になるという恐ろしい現実。人の命をなんだと思っているのだろうか。

「顔を見ただけで有罪だって分かる。」と黒人だからといって一方的に決めつけられるのはあまりにも残酷すぎる。

本来守ってもらえるはずの警察、検察、司法機関である裁判所などの法の番人たちが、脅して無理やり偽証させ、無実の証拠や証言者が沢山いたとしてもたった1人の証言で公正とは言えない判決が下されるなど、客観的に見てもありえないような状況には怒りさえ感じてしまう。

確実な証拠を持って裁判に望んでも判決を覆さない裁判長。無実の証拠やアリバイがあろうとも、力技の不正で何とでもなってしまうのだから本当に恐ろしい。

アメリカでは死刑囚の1割が冤罪で釈放されるという驚くべき冤罪率。

銃を突きつけられようと、服を全部脱がされようと、不当な扱いを受けても怒りを我慢し、冷静さを欠かずに立ち向かっていくスティーブンソンの勇敢さには勇気を貰った。

偏見や差別を受け、どれだけ不利な状況でも熱意を持って誰かの為に行動できる人は少ない。

1960年代ならまだしも、これが1980〜90年代のつい30〜40年前の実話というのだから、いまだに人種差別は根深い問題として残っているのだろうと思う。特に南部の地域では酷いのだろうな。

真犯人を野放しにして、何の罪もない人に罪をなすり付けて死刑にしようとするのだから、治安が改善せずむしろ悪そうに見える。

マイケル・B・ジョーダンもジェイミー・フォックスも役者たちの絶妙な表情に全てが詰まってて本当に表現が上手だなと思った。

タイトルは『Just Mercy(公正な慈悲)』のままの方が良かったと思う。邦題で結末が全て分かってしまうのが残念。実話に基づいているからこれといって盛り上がり所がなく淡々としている。


黒人たちが肌の色で差別されて虐げられてきた歴史の重みを感じる作品だった。


“貧困の反対は富ではなく正義”
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