滝和也

21ブリッジの滝和也のレビュー・感想・評価

21ブリッジ(2019年製作の映画)
3.7
ブラックを代表する
俳優へと上り始めた
男がいた。

数々のブラックの
英雄を演じ…
その男は突然
逝ってしまった…

「21ブリッジ」

チャドウィック・ボーズマン。享年43歳…余りにも若すぎる死…。ブラックを代表する俳優への道を歩んだ男、その遺作となった作品…。

嘗て刑事だった父を殺されたデイビスは同じ道を歩んでいた。苛烈な正義感を持つ彼は犯罪者に容赦ない鉄槌を浴びせ、内部調査に目を付けられた存在だった。その中、麻薬組織の抗争から50キロものコカインが盗まれ、その際に警官が7名撃たれ殉職する事件が発生。デイビスは麻薬課のフランキーとマンハッタンにかかる全ての橋を封鎖し、犯人を閉じ込め、追い詰めるが…事件には深い闇が存在していた…。

題名には2つの意味がある。確かにマンハッタン島封鎖の意味…そしてもう一つその橋が貧富の差を分ける境界線であると言う意味が存在する。

そして…実はチャドウィック演じるデイビスは孤立無援の戦いを演じる。しかもNYマンハッタンの夜の闇の中で。

肌の色と言う差別に変わる貧富の差と言う新しい差別が背景にありながら、孤立無援の戦いを強いられる黒人刑事と言う設定は嘗て初の黒人人気俳優シドニー・ポワチエ演じた夜の大捜査線へのオマージュとは考えられないだろうか。

もしそうであれば…チャドウィック・ボーズマンが病魔を押して、体を張って演じた事に意味を感じる。数々のブラックの英雄を演じた彼に相応しい役柄であり、ポワチエと言う先駆者の跡を追ったのだと。

ストーリーはやや分かりやすいものの…その考えが浮かんだからかわからないが、どこか懐かしさを感じていた。それはやはり70年代のフレンチコネクション等のハードな刑事物のイメージがあるからだろう。(私は結構好きなんだが。)

病魔に侵されていたとは思えないキレのある演技とアクション。その痛快なる存在は正にボーズマンならではだったと思う。無論ガンアクションも見事だった。

やはりチャドウィック・ボーズマンはブラックを代表する俳優になるべき存在だった。今作もやはりブラックを代表する作品だったと思う。故に余りにも惜しい…これから更に油が乗り開花するはずだったのにと。
滝和也

滝和也