シップを貼った時に、じわぁーと沁みるインドメタシンのような映画だった。
偶然知り合った芸術家3人の困窮した暮らしを独特のタッチで描く。
家賃滞納でアパートの立ち退き命令を出された作家が、レストランで意気投合した画家を連れて帰宅すると、次の住人である音楽家がそこにいて、顔を合わせる3人。
売れない芸術家達だが情熱はある。
情熱はあるが金はない。
それぞれ恋人ができるが金はない。
芸術の街パリを舞台にしているが、美しさや洒落た雰囲気はなく、薄暗い街の薄汚れたアパートに哀愁が漂う。
惨めな貧乏生活の中で、それぞれが芸術に向き合い、日の目を見る日が来ることを信じている。
前半は、陽の当たらない場所でもがく悲しき男たちの物語だったが、それぞれ恋人ができてからの展開がとても良かった。
「男は毎日ボロを着ても落ち込んだりしないが、女はドレス1枚に歓喜する」
金のない芸術家達は、恋人にひもじい思いをさせないように最大限の幸福を与える。ピクニックのシーンは風光明媚な景色で、陽の当たる場所に幸福が溢れていた。
書き溜めたポエムで暖をとる場面がグッときた。とにかく女性に対して優しい。金はないけど愛がある男と、幸福を考える女。悲劇に向かう物語の中に、なんとも言えない切なさと温もりがあった。
エンディングで流れ出した日本語に違和感を覚えたのはほんの一瞬だった。「雪の降るまちを」が物語と妙にマッチしていて、しっくりきた。