エミさん

アスのエミさんのレビュー・感想・評価

アス(2019年製作の映画)
3.3
まず、ビックリハウスの存在。遊園地の一角でありながら、砂浜へのデッキを降りた少し外れた場所に立っているのも不自然だし、ビックリハウスの中にある出し物もまた中が分からず特異で怖い。

私も小さい頃に、遊園地にあったビックリハウスに入ったことがある。今でこそ、小さい頃って何であんなに未知のものへの好奇心に溢れていたのだろう!?と疑問に思うが、主人公アデレード同様、私もやっぱり、鏡張りの部屋が異世界への入り口かも…と想像したりして、「次は何が待っているんだろう?」と、ドキドキワクワクしながら先に進んだものだ。そのビックリハウスにも最後、『本当の自分』と題した美しい額縁の化粧鏡が設置されていて、最後のオチに「な〜んだ」と、ガッカリ苦笑いさせられたのだが、映画の中でのアデレードは、私とは違う体験。事実ならほんと怖い。

よく知っている『自分』が目の前にいる恐怖。鏡を通して見る自分ではない…。目の前にもう1人の本物が存在しているのだ!
『自分』に襲われる恐怖。『自分』を殺さないと殺されてしまう恐怖。最初は、自分が正義で対峙する相手が悪という構図だと思ってたら、揉み合っているうちに、内にあった狂気が現れて、どっちが悪なのか?どっちが存在すべき存在なのか?という恐怖に駆られていくところが実に面白い。

劇中によく出てくる『11』という数字やエレミヤ書の文言。
段々と伏線が繋がっていくと、見えてくるメッセージ。

ある1人の少女は、太陽の元で不自由なく有意義に謳歌しながら生きてきた。
もう1人の少女は、太陽から閉ざされ自由なく飢餓に苦しみながら生きてきた。

傲慢に生きている人々が地上に溢れた時、天変地異みたいな何かが起こって世の中がひっくり返ってしまったら!?
久々、今まで平穏で幸せだと思っていた毎日が、一瞬でなくなってしまうことがこれほど怖いものかと思わされ、見終わった後は鳥肌が立ってしまいました。