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ユーリー・ノルシュテイン《外套》をつくるのsoのレビュー・感想・評価

3.5
ハンドクラフトという文字を見ると「おっ!」と思う。
同時に値札を見ればまた「高っ!」と思う。
労力を惜しまずに手作りで時間をかけて制作することがどれだけ大変で費用のかかることか。それを知るためには、制作の舞台裏を覗くしかない。

ユーリー・ノルシュテインの手がけたアニメーションには手作りのものにしか宿ることのない生命力に溢れた暖かさがある。
誰の目にも一線を画した彼の作品。
しかしその制作方法もまた、一線を画していた。
引き出しから取り出す、登場人物の目や手や服の小さなパーツ。
手作業で雪をふらせ、それをまた手作業でコマ送りで撮影する。
ここまで忍耐の必要とする作業を、超少人数のチームで行っている。
少人数だからこそ、一人が欠けてしまうと制作は止まってしまう。
全員が職人であって、色んな意味でかなりギリギリな制作環境であることが判明してくる。
人類にとって宝の様な作品を生み出す彼らが資金難となっている事実は本当に理解しがたいことだが、それは彼の制作に対する頑固な姿勢が招いたことなのだろうか。

制作が中断している「外套」はその断片だけでも本当に素晴らしい。
いかにもロシア的なうら寂しい色合いや人物の表情や動きが胸を打つ。
無事完成した「外套」を劇場で鑑賞できる日が来ることを願うばかり。
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