うさふわ

ボーダー 二つの世界のうさふわのレビュー・感想・評価

ボーダー 二つの世界(2018年製作の映画)
-
この作品の前では、どんな感情も役に立たないことを思い知る。

人の感情を嗅覚で司る能力を持つ、税関職員の開花

ストックホルムで営まれる生命に
色んなエゴを見て、色んな愛を見て
色んな生命衝動を見た。

人類は高度な知能を持ったがために、複雑怪奇にもつれてしまった。
偏見と差別、児童ポルノ、人身売買…
生命倫理がエゴや復讐心によって蹂躙される。
人がこれまでの人で無くなろうとしている段階に差し掛かっている今、その複雑さに根差す、生命衝動の悦びを本作では生々しく鮮烈に描いていた。

己の中に流れるDNAの真理に対峙して、
ちっぽけな居心地の悪さとビッグバンの様な衝撃に、ただ立ち尽くすことしかできない。

何だろう、シェイプ・オブ・ウォーターの様な異質感。
この作品をどの程度理解できているかわからないけど、自分の中の断片的な点が繋り、線となって輪郭を帯びた様な感触だ。

何故生き物は威嚇し、愛するのか。
何を持って愛着の対象とするのか。
何が性愛と慈愛を分け隔てるのか。
私達の本質は何を望んでいるのか。
ずっとずっと考え続けてきた。
それら疑問の解の一つとして本作があるように思う。

シンプルな生命の摂理に感性を揺さぶられる作品だった。
うさふわ

うさふわ