踊る猫

よこがおの踊る猫のレビュー・感想・評価

よこがお(2019年製作の映画)
4.1
深田晃司監督はいつもながら生真面目に社会派のテーマを盛り込んで映画に独自の彩りを添える。今回のテーマは介護業務の現場と少年犯罪、そして加害者と被害者の関係性についてだろう。加害者とされてなじられる人間が、実は別の角度から見れば被害者であるかもしれないというパラドックス。それ故に、被害者としてケアされるべき(それは過剰なマスコミの報道や、もしくはプライバシーの侵害に由来するものだろう)人間がケアが為されない落とし穴が存在することを教えてくれる。深田監督の映画を観ていて気になるのは、奇妙にリアリティが希薄であること。この映画もなるほど人の心の奥底にある悪意を描写しておりそれはそれでお世辞抜きに巧いと思われたのだが、このような時代なのだからネットの世論の暴走や警察の無情さ(もしくは人情味)を描いてもよかったのではないか。全てがどこか生々しさが感じられず、寓話的というか牧歌的なように思うのだ。同じ少年犯罪を描いていても岩井俊二の映画のようなソリッドさがない。それはある意味では美質であるとも思うのだが、今回は悪い方向に働いたように思う。
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