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よこがおのKKMXのレビュー・感想・評価

よこがお(2019年製作の映画)
4.0
いや〜、実に気まずいガーエーでございました。疲れるけど面白かったです。

ストーリーは割とベタな愛憎サスペンスで、どんな風に展開していくのかは読めるのですが、先に気まずい事態が待っていることが解るため、逆に緊張を強いられました。うわ〜気まずいの来るぞ来るぞ…ぐぉ、来た!みたいな感じで、気まずさジェットコースターガーエーすなわちKJGでした。

退屈に感じることもほぼなく、密度の濃い内容で、複雑なサスペンスを求めなければ相当面白く感じる可能性は高いと思います。演者や演出含め完成度はかなり高い作品という印象です。
その代わり、気を抜けるパートがほぼないです。そのため、鑑賞後は非常に疲れて、体が凝って背中が痛くなってしまった。

本作は心理劇的な側面もありますが、心の動きがかなり大きく、物語の明確な流れに沿った変化なので、個人的にはほとんど関心を抱きませんでした。
しかし、いくつか感じるものはありました。


ひとつは、緊急事態においては初動が超大事であることです。主人公・市子は、自身の血縁者が仕事関係の知り合いの事件に関与していることを知りますが、それを隠します。正直、隠し通せるレベルではないのに隠してしまった。
この手の保身は、人間のサガだと思いますが、間違いなく破滅をもたらしますね。吉本の闇営業とかもそうでしたが、事態の重さを判断してウソが突き通せるかどうかを見極める力は生きてく上でめちゃめちゃ重要だなぁと痛感しました。


もうひとつは、登場人物があらかた切なく遣る瀬無いことです。派手に転落する市子以上に、気持ちをコントロールできず憎しみを交えた表現しかできない基子とか、断片的にしか語られないものの父はおらず母親はおそらくメンタル不調、息子は無職で罪を犯してしまうという市子の妹家族とか。池松壮亮演じる基子の彼氏の美容師もやりきれない暗さを抱えているように感じました。


実はさほど好みではない内容でしたが、観る応えたっぷりで充分楽しめました。
『葛城事件』のようなザ・地獄映画ではありませんが、負のエンタメとしては最高峰と言っても良さそうな完成度でした。
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