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よこがおのさんぴんのレビュー・感想・評価

よこがお(2019年製作の映画)
3.5
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#映画備忘録 #20200927
#よこがお
監督脚本/深田晃司
2019/日本/111分
#Amazonレンタル #映画部
#映画好きな人と繋がりたい
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2016年『淵に立つ』でカンヌ国際映画祭・
ある視点部門審査員賞に輝いた深田晃司監督
最新作。とある誘拐事件をきっかけに、
それまでの人生を奪われた女性の復讐劇を描く。
主演に、「淵に立つ」の筒井真理子、
共演に市川実日子、池松壮亮、吹越満らが
名を連ねる。
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絶賛レビューが多かったから鑑賞。
淡いジャケットから想像できない程の
ドスンしたものをもらってしまった。
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映画を観始めて割とすぐに、あれ?
ここの話とここの話は時制が違うってことに
気付く。
日頃の真面目な仕事ぶりから、周りからの
信頼も厚い筒井真理子演じる主人公市子。
その真面目な仕事ぶりを映している時制と、
何やら年下の美容師を誘惑しているて市子。
別時制の話が二軸で進んで行って、
後半あたりで交錯するって作りはとても
好きな作りなのでもう最初からワクワク。
ただ、そのいわるゆ「前半時制」と、
「後半時制」で明らかに人の変わった市子、
その人の変わる原因となった事件が起きて
からはもうどんどんお腹が痛くなる。
ちょっとしたネタバレで言うと、09年の
「誰も守ってくれない」的なあれですよ。
それまで本当に真面目、真面目過ぎるほどの
性格だった市子、だがある一点で決して
間違いではない決断、自分に甘い決断を
したがばっかりにどんどん地獄に転がって
いくことに。
この地獄に転がっていく場面がとても怖い。
市子の職場や家にまで押し掛けてくる記者。
ほんとならここで、「誰も守ってくれない」
みたいにマスコミ批判をすることもできるのに
この映画ではそれはあえてやらず、周りから
どんどん浮いていく市子を徹底して映す。
市子の職場の看護師の人達が怖かった。。
訪問介護という、優しい仕事をしてるのに、
あれが発覚するまでは何気なく会話を
していたのに、市子のある一面を見てから
急に距離を取った態度に。
でもその距離を取るのも、自分に置き換えて
考えてみると自然なことだよねって思えたり。
はたまた、結婚を約束した吹越満からも、
露骨に警戒されるあの場面。
非常にお腹がキリキリしました。
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そしてその地獄への決定的なひと押しを
してくれる市川実日子演じる基子。
最初から市子に対して、少し度を越した
信頼を持っているように見える市子。
(個人的には、ジャージの裾からシャツが
ちょっとはみ出てるのが良かった。)
もはや危うささえ感じるほど市子への
信頼が厚かったからこそ、可愛さ余って
憎さ百倍。市子からのある報告を一方的、
いや、一方的ではないのか?(笑)
まあ報告を裏切りと捉えて、それまでの
共犯関係を崩してしまう。
崩された市子はそのせいで地獄へ落ちる
ハメとなったため、基子への復讐を始める。
この辺で腹痛がピークになってました。
エクスペンダブルズ3でとスタローンと
メル・ギブソンみたい、些細な事で友情が
崩れ、お互いを憎むようになる。
スライとメルならマッチョ同士肉弾戦で
決着を着けましたが、こっちは日本人女性。
ものすごく陰湿というか、ねちっこいというか。
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そうした復讐劇もひと段落し、新たな
生活を踏み出したように見える市子。
物語も最後の最後。なるほど、これは
今まで暗い話とだったけど、最後の結末は
明るい話なのか!って思ってたら違う。
え?お前ここまで来てまだ執着するの!
的な展開に一旦落ち着いた腹痛カムバック。
ラストの市子の叫びにも聞こえるあの音。
そしてそこからの静けさ。
鏡越しの市子の表情でこの映画は終わるん
だけれど、いかようにも読み取れる。
元の生活に戻っていきそうな顔でもあるし、
また復讐を始めそうな顔でもあるし、
はたまたそのまま崖から飛びそうな顔でも。。
この辺の受け取り方は見る人次第でしょう。
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人間関係の難しさ、切なさ、苦さなど、
社会派サスペンスとしても見れる1本。
オススメです。
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